化学にメガ再編の潮流、日本勢は戦えるか 米国の化学大手の統合が塗り変える業界地図

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統合後に2.3兆円規模となる農業事業は、農薬や遺伝子組み換え種子といった分野で高い競争力を誇る。ただ、穀物価格はブラジルなどの供給過多で、足元は軟調に推移。大豆は2012年の1ブッシェル当たり17ドル台から、8ドル台まで下落しており、早期の市況回復は望めそうもない。

苦境を打破すべく、農業業界では、再編の機運が高まっている。農業専業で種子最大手の米モンサントは2015年夏、農薬最大手のシンジェンタ(スイス)に買収を提案した。結局まとまらなかったものの、ダウとデュポンの統合をきっかけに、さらなる合従連衡が進む可能性がある。

日本勢は買収の対象外

一方で、今回のメガ再編劇が日本の総合化学メーカーへ与える影響は、軽微にとどまりそうだ。

SMBC日興証券の竹内忍シニアアナリストは「日本メーカーは買収対象として魅力に乏しい」と分析する。

日本の化学メーカーも大手2強に集約が進むとはいえ、規模では海外の競合に遠く及ばない。さらに総合化学メーカーは事業内容が多岐にわたるため、M&Aでは不要な事業の切り放しが必須となるが、日本企業のリストラは簡単ではない。

国内勢が世界の巨人に対抗するには、「価格競争が厳しい汎用品を切り出して統合・再編し、自動車向け材料など高機能製品を独自で展開していく道が現実的」(竹内氏)。

国内最大手の三菱ケミカルホールディングスは、原油安により採算が改善。円安にも助けられ、業績は2012年度を底に回復傾向にある。一息ついた今こそ、攻めの一手を打つ必要があるはずだ。

「週刊東洋経済」2016年1月9日号<4日発売>「核心リポート07」を転載)

藤尾 明彦 東洋経済 記者

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ふじお あきひこ / Akihiko Fujio

『週刊東洋経済』、『会社四季報オンライン』、『会社四季報』等の編集を経て、現在『東洋経済オンライン』編集部。健康オタクでランニングが趣味。心身統一合気道初段。

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