JTの株主総会はTCIからの株主提案を否決。株主からはたばこの将来に対する不安の声も
英国の投資ファンド、TCI(ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド)からの株主提案が最大の焦点となった日本たばこ産業(JT)の第27回定時株主総会。6月22日に都内で開催された同総会では、TCIからの増配や自己株買い、自己株消却の株主提案はすべて否決された。
TCIは、「剰余金の配当率が国外の競合他社よりも格段に低い」として、期末配当金を1株当たり2万円に増配することを要求。同日付で就任した木村宏会長(前社長)は、連結配当性向について「2013年度までに40%を実現し、その後は中期的に、遅くとも16年度までに、グローバル日用消費財メーカーと比肩する50%の達成を目指す」としながらも、「将来の利益成長のための事業投資を制約する」として、TCIの提案に反対を表明。「1株当たり6000円の期末配当(中間配当と合わせて1株当たり1万円)」とする会社提案が承認された。同様に、自己株買いや自己株消却についてのTCIからの提案も否決された。
今後の事業戦略について、木村会長は「たばこ事業の競争力強化を最優先する」と、国内、海外のたばこ事業へ注力する姿勢を改めて明言。一方で、株主からはたばこ事業の将来性に関する質問が相次いだ。
ある株主は、「今後、禁煙の動きが進めば国内市場は狭まっていく。現在は海外事業の伸びで補っているが、いずれは海外にも同様の動きが出てくる。たばこ事業以外の医薬、食品事業には、どれだけ力を入れているのか」と質問。それに対し、新貝康司副社長は医薬事業で抗HIV薬「JTK−303」の上市が近づいていること、食品でも不採算事業の整理が一段落したことを挙げ、「たばこを補完できる素地が整ってきている」と述べた。
また、別の株主は「JTは医薬、食品では後発メーカー。安全性や味など、(他社商品と差別化できる)特徴が必要になるが、今後何をしていくかが見えない」と質問。新貝副社長は「食品事業のメインの柱は飲料と加工食品。飲料は伸びの著しい『ROOTS』ブランドなど、自社ブランドを強化する。加工食品では冷凍麺、米飯、冷凍パンなどの主食商品に集中する」と答えた。
全部で10人の株主が14の質問を行い(昨年は10人が17の質問)、4つの会社提案はすべて承認された。議決権を行使できる株主5万1994人(議決権個数952万1474)に対し、議決権を行使した株主は1万9443人(同844万4312)、終了時の会場出席者数は763人(昨年789人)だった。所要時間は102分(同94分)とやや増えた。
(平松さわみ 撮影:吉野純治 =東洋経済オンライン)
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