合理的配慮をめぐるモヤモヤ...「本当に無理?」「あの子だけずるい」「現場が持たない」を乗り越える学級経営の視点とは?《新年度前がチャンス》
基礎的環境整備は、冒頭で示した野球観戦のイラストで言えば、「箱を配るべきか否か」や「どうやって配るか」を考える以前に、「そもそもこの壁は本当に必要なのか」「壁の高さや形は、このままでいいのか」と問い直すことに当たります。
子どもも大人もラクになる!基礎的環境整備の3つの利点
では、基礎的環境整備・事前的改善措置に取り組むことで、何が変わるのでしょうか。ここでは、その大きな利点を3つに整理してみたいと思います。
1. 線引きやラベリングをせずに済む――子どもが傷つかなくて済む
まず何より大きいのは、子どもを「分ける」必要がなくなる、ということです。合理的配慮だけに頼る場合、「本当に無理なのか」「特別な事情があるのか」という線引きがどうしても発生しがちです。
その過程で、診断や証明が求められたり、「甘えているだけでは?」という疑念が向けられたりすることも起こります。
一旦「ふつうに合わせる」ことを強く求められた後で、「特別な事情があるみたいだから、考慮します」と言われても、疎外感や劣等感は、簡単には消えません。
基礎的環境整備を進めることは「ふつう」自体をゆるめ、「みんなそれぞれ、いろいろ事情があるよね」を文化にすることでもあります。だから、基礎的環境整備を十分にやっていけば、実は合理的配慮はより自然に受け入れられるようになっていきます。
2. 合理的配慮が必要な場面が減る――教職員にとっての持続可能性が高まる
2つ目は、そもそも合理的配慮が必要になる場面そのものが減るという点です。
基礎的環境整備が進んでいけば、「これはみんなにとって使える選択肢」「困っている人は誰でも使っていい」という状態が、最初から用意されます。結果として、合理的配慮は“特別な対応”ではなく、必要なときに補助的に行う調整という位置づけになります。
これまで「35人学級で合理的配慮の必要な子が15人いて困っている」といった相談をたびたび受けてきました。切実な困りごとだというのは本当によくわかります。ただ、これは逆に言えば今の基礎的環境がまだ画一的であるというサインだと見ることもできます。
15人分の個別対応をするのではなく、授業のあり方や学級経営の「今のふつう(基礎的環境)」を見直すことで、15人中10人がカバーできるようになるとしたら? 教職員の働き方や学校の組織運営の持続可能性という観点から見ても、意味が大きいのではないでしょうか。
3. ほかの子の「私もしんどい」が軽くなる――みんなにとって選択肢が増え、ウェルビーイングが高まる
「ずるい」という訴えの背景にあるのは「私もしんどいのに・我慢してるのに」という思いです。学校生活に適応できているように見える子どもたちも、決して余裕のある状態で学校生活を送っているとは限りません。
ただ、それを言語化したり、訴えたりするきっかけがないだけ、ということも多々あるのではないでしょうか。
「必要に応じて個別調整しましょう」という合理的配慮を、ほかの子が納得するには、前提として「自分はこの基礎環境で困っていないし苦しくない」という状況が必要であると感じます。
基礎的環境整備は、特定の子だけではなく、教室や学校にいる全員を対象にした取り組みなので、全員が恩恵を受けます。


















無料会員登録はこちら
ログインはこちら