JR東海・静岡県・国交省「リニア工事で握手」の意味 着工へ大きく前進「川勝時代の対立」解消できるか

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地元が求めていた国の関与については、合意文書には明確な記載がない。「本件工事の影響や対策の実施状況については、国土交通省も関与する中立的・継続的なモニタリング体制において専門的見地から確認し、国土交通省の指導のもと、JR東海において所要の対応が講じられるようにすること」と書かれているにすぎない。JR東海では対処しきれない不測の事態には国が代わって補償することが地元の要望だと思われるが、流域市町の首長の1人は「いま国が書ける最大限のこと書いていただいたと思う」と述べ、スピード感を優先した。国も流域市町の意向に応えて、「最終的な責任は国が負う」ことを自覚すべきだ。

話は変わるが、締結式の前日である1月23日、日本ラグビー協会は2035年ワールカップの招致に立候補すると発表した。招致に成功すれば日本中が沸いた2019年大会に続く2度目となる。

招致活動のスローガンは「NO SIDE SPIRIT (ノーサイドスピリット)」。ノーサイドとはラグビーにおける試合終了を指す用語であり、試合終了の笛が鳴った瞬間に敵、味方の区別(サイド)がなくなり、お互いに敬意や健闘を称え合う。

世界的には「フルタイム」が試合終了の用語として使われているが、日本ではノーサイドの精神が根強く残る。日本ラグビー協会の土田雅人会長は「分断、格差があふれる時代にこそ、ノーサイド精神が必要とされる。この言葉を世界の合言葉にしたい」と話した。

日本ラグビー協会 ワールドカップ招致
日本ラグビー協会は2035年ワールドカップ招致活動のスローガンに「ノーサイドスピリット」を掲げる(記者撮影)

対立は何も生まない

大井川水資源問題の締結式に話を戻すと、囲み取材で県の担当者が「JR東海のアセスが不十分で、県の意見に真摯に対応してこなかった。県がずっと求めてきたことにJR東海がようやく応えてくれるようになったのでここにつながった」と話したことが気になった。締結式が終わりノーサイドになったはずだが、現場ではまだわだかまりがあるように感じられた。

だがそのJR東海も公式ホームページに「静岡工区のトンネル掘削工事に未だ着手できておらず、静岡工区が名古屋までの開業の遅れに直結しており、2027年の名古屋までの開業は実現できる状況にありません」と記載している。県にしてみれば、「静岡のせいで開業が遅れているというが、その原因はJR東海にある」と言いたいのだろう。トップ同士が握手をしても、現場がこれでは先行きが心配だ。こんな状況だからこそ、ノーサイドの精神が必要とされるのではないだろうか。

残る生物多様性とトンネル発生土の問題について、スムーズに対話が進めば年内に着工が認められる可能性もある。さらに2035年にワールドカップ招致が実現すれば、海外から来た多くの観戦客がまもなく完成するリニア工事の様子を見ることができるかもしれない。対立構造は何も生まない。両者が共創すれば明るい未来が見えてくる。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げ。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に定年退職後の現在は鉄道業界を中心に社内外の媒体で執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京交通短期大学特別教養講座講師。休日は東京都観光ボランティアとしても活動。

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