くわえるだけで歯磨きが完了するロボット歯ブラシ製品化へ。最短1分、手を動かさずに歯垢の7〜8割を除去

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Genics代表取締役の栄田源氏は、早稲田大学でロボット工学を専攻した。きっかけは高校時代に見た映画「アイアンマン」だったという。

「ロボット技術が人々の生活を手助けしていく姿に興味を持った。日常生活で誰でも使えるものを開発できないかと考えた結果、口腔ケアの分野がテクノロジーによってまだ未開拓だと気づいた」。栄田氏自身も歯磨きは苦手だったということもあり、全自動で歯を磨いてくれるロボット歯ブラシに目をつけた。

15年にJST(科学技術振興機構)の研究費を得て大学での研究開発を開始。17年にも追加の研究費を獲得し、18年には博士課程入学と同時に会社を設立した。

19年、世界最大級の家電見本市「CES 2019」(アメリカ・ラスベガス)で初披露した。それから6年、ブラシの試作は約1万個にのぼった。栄田氏は「バスタブ2杯分ぐらい」と表現する。

g.eN
約10世代の本体開発とあまたのブラシを開発して発売に至った(筆者撮影)

「ロボット歯ブラシ」という名称は、提携する仮屋院長のアドバイスだった。「せっかくロボット技術を勉強しているのに、全自動歯ブラシでは伝わらない。掃除ロボットと同じように、ロボットと付けた方がいい」。栄田氏もこの助言に納得し、製品名に採用した。

介護現場で200台以上が稼働

g.eNは量産化以前から、医療機関や介護施設で活用されてきた。旧モデルは200台以上が日常的に使われている。

26歳の筋ジストロフィー患者の事例がある。小学校のときに発症し、歯ブラシを口元まで持ち上げての歯磨きが困難だった。母親がメインで介助していたが、g.eN導入後は口腔環境の改善が見られ、本人の心理的負担も軽減された。1年以上、毎日継続して使用しているという。

40代のALS患者は、まず口腔内マッサージパーツから使い始めた。1カ月目はマッサージのみ、2カ月目から歯ブラシにも挑戦し、3カ月目以降は両方を使用している。開口量と唾液分泌の改善が言語聴覚士によって確認された。

想定外の使われ方も生まれた。小学生の弟が、高校生のダウン症のある兄に使ってあげるというケースだ。栄田氏は「大人が介在しなくても、子ども同士でケアし合えるデバイスになる可能性を感じた」と話す。

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