「専門性が求められる割に日本語支援員の賃金は安いうえ、職場環境が過酷なので、ますます成り手がいないという悪循環になっています。そのため、『その国の言葉が話せる人なら』『日本語が話せる人なら』と日本語支援員の採用基準が下がっていく一方です」
日本語がわからないままの子どもたち
さらに、日本語指導そのものは日本語支援員に任せていても、教員にかかる負担は大きいと佐藤さんは指摘する。外国籍の児童生徒とコミュニケーションを取るために翻訳機器を使用していたり、授業にも影響が出ている学校もあるという。
「日本語がわからなければ、授業を理解することはできません。小学校の低学年ならなおさら、わからないまま教室でじっとしているのは苦痛ですよね。教室を歩き回ったり、教室から出て行ってしまったりということも。その度に授業が中断し、担任の先生や校長、副校長、日本語支援員といった大人が数人でその子を追いかけるという場面に何度も遭遇しました」
問題が山積する過酷な現場でも仕事を続ける日本語支援員にとって、やりがいやモチベーションはどこにあるのだろうか。
「その子の母語でコミュニケーションが取れ、次第に日本語が上手になり、文章で話せるようになっていく。そんな姿を見るとうれしいですね。しかし、近年は日本語だけでなく、家庭教育まで担う必要が出てきています。また、1対1で教えても、3カ月くらい経つと突然帰国してしまう児童生徒も少なくありません。そのため、それまでの指導が無駄になってしまうのです」
日本語支援員の指導を受けても日本語が上達しない子も多いという。その理由を佐藤さんはこう分析する。
「理由は主に2つあると考えられます。1つは、教える側が日本語指導に関する専門知識を持たないまま、漠然と教えている人が多いこと。もう1つは、『日本の公立学校なら何とかしてくれる』と考えている親子が多いことです。日本語の勉強に身が入らない外国籍の子と話すと、『日本の学校の先生は優しく、勉強しなくても怒られないから』『日本では勉強しなくても高校や大学に行けると聞いた』という声を聞きます」
もちろん、一生懸命勉強している外国籍の子どももたくさんいる。そして、以前から外国籍の子どもや、外国から帰国した日本国籍の子どもなど、日本語の指導が必要な子どもはいた。しかし、近年は特に問題が大きくなっていると佐藤さんは指摘する。


















