愛知県西尾市、子どもが「国籍関係なく輝ける」よう15年続ける学内外の支援とは 一人ひとりの可能性を広げる「多文化共生教育」

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外国にルーツを持つ児童・生徒が増えている。しかし日本語の壁や文化、生活習慣の違いから不登校につながり、高校進学に影響するケースがある。そうした状況を改善するため、学内外で連携して就学・進学・学習支援などを進めてきたのが、愛知県西尾市だ。すでに15年以上続く取り組みについて、キーパーソンたちに話を聞いた。

「不就学ゼロ」「全日制高校への進学率向上」を目指す理由

「ものづくりのまち」として知られる愛知県西尾市。自動車関連産業から抹茶を製造する地場産業まで多数のメーカーが集まっている。こうした背景から外国籍の住民が多く、2025年3月1日時点で市内人口に占める割合は約7.2%※1。同時点での日本の総人口における外国人の割合は約2.9%※2なので、全国と比較してもその比率の高さは突出している。

必然的に市内の小・中学校に通う外国籍の児童・生徒も全国と比べると多い。西尾市の統計によると、2025年5月1日時点で小学生の約6.6%、中学生の約4.6%を占めている。1クラス40人とすれば、各クラスに1~2人は外国籍の児童・生徒が在籍している計算だ。ちなみに、2023年の全国の公立小・中学校に在籍する外国人児童生徒数の割合は約1.3%※3である。

西尾市教育委員会 学校教育課 日本語教育担当の朝倉大氏は、次のように話す。

「以前、西尾市に住む外国籍の児童・生徒には学習や生活の面でいくつか課題がありました。まず、日本語力が足りないために授業を十分には理解ができず、コミュニケーションがスムーズに取れない児童・生徒がいました。また文化や生活習慣の違いもあり、適応できずに孤立してしまうことが少なくありませんでした。母国では好成績だったのに、日本語が理解できなくて成績を落とし、メンタル不調に陥って不登校になったり、引きこもりになったりというケースもありました」(朝倉氏)

朝倉 大(あさくら・だい)
西尾市教育委員会 学校教育課 日本語教育担当
(写真:本人提供)

そうなると、どうしても進路に影響が出てしまう。高校、とりわけ全日制高校への進学率は低かった。また、外国籍の子どもは日本の義務教育の対象ではないことから、小中学校の段階で不就学というケースも少なくなかった。

「国籍に関係なく、児童・生徒が自ら可能性を広げ、自分らしく生きていけるよう支援することが必要だと考えています。市教育委員会では、『不就学ゼロ』と『希望する全日制高校への進学率の向上』を目指し、学校・地域・家庭・関係機関が協力して多文化共生教育の取り組みを進めています」(朝倉氏)

※1 西尾市の統計によると、西尾市の人口は、2025年3月1日時点で16万9362人。うち外国人は1万2283人
※2 総務省統計局の統計によると、日本の人口は2025年3月1日時点で1億2342万人。うち外国人は356万5000人
※3 文部科学省「学校基本統計」より

在籍校・学内・学外の教室が連携して子どもたちを支援

西尾市が取り組む多文化共生教育の基盤となっているのは、2つの「教室」だ。1つは、学校内で支援をするプレクラスの「日本語初期指導教室カラフル」。もう1つは、学校外で就学前児童から高校生(5~18歳)を対象に、幅広く就学・進学・学習支援を行う「多文化ルームKIBOU(きぼう)」である。

日本語初期指導教室カラフルは、市内の2つの小学校に設置されており、市内の小・中学校に在籍する児童・生徒のうち、日本語や日本の学校生活に慣れていない子どもに、学校での基本的な生活習慣や日本語指導、教科学習の導入などを行う。期間は原則3カ月でカラフルでの出席日数が在籍校の出席日数として扱われる。期間内、週1日は在籍校に、週4日カラフルに通うそうだ。

子どもたちに読み聞かせをする様子
(写真:菊池氏提供)

室長の菊池寛子氏は、次のように話す。

「日本特有の学校文化を伝えることを大切にしています。例えば『登校時に靴を履き替えて靴箱に入れる』『掃除は児童・生徒が行う』といったことです。それを知らなくて、ほかの子どもたちに注意されたことを悪口と受け取ってしまい、トラブルに発展することもあるからです」(菊池氏)

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