
原則、児童生徒の在籍する学校における「取り出し」指導を、日本語指導担当教員(教員免許を有する教員)または日本語指導担当教員+指導補助者が年間10〜280単位時間行うとしている(「義務教育段階における日本語指導のための特別の教育課程」制度)。
佐藤さんは、こうした日本語指導が必要な児童生徒の支援を公立小中学校で行っている。しかし、佐藤さんによれば「常駐の日本語指導担当教員がいる学校は自治体の中でも数校で、教員免許を持たない私たちのような外部の日本語指導支援者が携わるケースがほとんど」だという。
文科省は、2017年度から26年度の10年間で段階的に「日本語指導担当教員を18人に1人」にするとしているが、現状は配置が追いついていない地域もあり、拠点校に集まって指導をしたり外部指導者に頼ることも多いようだ。
佐藤さんのような外部の日本語指導者の呼び名は自治体によって日本語指導員、日本語等指導講師、日本語学習支援員などさまざまだが、ここでは日本語支援員とする。
昼食抜きで学校間を移動する日本語支援員
佐藤さんは日本語教員としてキャリアを積み、公立小中学校で日本語支援員として働くようになった。学校現場で日本語が母語ではない児童生徒に1対1や少人数で日本語を教えているが、近年、さまざまな問題が発生していると訴える。
「外国籍の生徒が増えすぎて、日本語支援員が大幅に不足しています。特に小・中学校では、まったく日本語ができないことが多く、最初はその生徒の母語で日本語を教えることになります。しかも、近年は出身国も多様化しており、日本語指導に加えてその子の母語がわかる人材というのは限られています。
親御さんがお子さんに日本語を教えられればいいのですが、近年は親御さんも日本語がまったくわからないまま日本に来たというケースが急増しています。そのため、日本語支援員の仕事が日本語教育よりも、むしろ通訳や生活支援がメインになることも多々あります」
日本語指導が仕事であるものの、結果的にソーシャルワーカー的な役割を担っていると話す。
日本語支援員のあり方は自治体によって異なるが、同じ市町村の中でも外国籍の子どもがいる学校、いない学校がある。加えて、日本語支援員の数も十分とは言えないため、1人の日本語支援員が1日の間に複数の学校を移動して指導することになる。しかし、公立学校は駅から遠い場合が多く、移動中に歩きながらパンやおにぎりを食べたり、昼食を諦めたりする人も多いという。


















