「Wordの黒ベタでは内部データは残る」Acrobatの墨消しとメタデータ対策で「消したつもり」漏洩を防ぐ方法

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Stanadard以上は有償のサブスクリプションになるが、もし会社の公式ドキュメントを扱う部署にいるなら、Adobe Acrobat Proは必要経費だと思ったほうがいい。知らずに公開したドキュメントから思わぬ情報漏洩が起こった場合、それをはるかに超えるコストがかかることを覚悟しなければならなくなってしまう。

PDFの基本仕様と歴史を知っておくべき理由

PDFとAdobe Acrobatの関係を理解してもらうために、その基本機能とルーツの話をしておこう。

先にPDFは「コンテナ化したドキュメント」だという話をしたが、「多様なコンピュータ環境において、レイアウトや書式などの外観を保持したまま表示・印刷ができる」ということもPDFの大きな特徴だ。初期の普及期でいえばMac環境でも、Windows環境でも見た目が変わらないというのがメリットだった。また、現在、iPhoneやAndroidなどのスマホ上で見ても同じ外見を保持できる。PDF登場以前は、OSが違うと表示できなかったり、レイアウトが崩れたり、文字化けしたりするのが普通だった。

そんな中、1990年代後半から2000年代初頭に印刷・出版業界を皮切りにPDFが注目され、普及し始めた。たとえば、紙面のレイアウト、写真配置や文字組みのデザインをそのままにPDF化し、デザイン確認や、文字校正、入稿(実際にフルサイズの写真を貼り込んだ入稿は、データサイズの問題から後年になる)などに使われた。

歴史をもう少し遡ると、PDFはアドビによって1993年に公開された。最初はあまり注目されていなかったが、翌年Adobe Acrobat Readerが無料配布され、少しずつ普及が始まった。

1999年にリリースされたMac OS X(Classic Mac OSに代わって登場した、現在のmacOSのルーツ)がOSレベルでPDFに対応したのも普及に大きく貢献した。以降、macOSやiOSでは画面描画のコアにPDFベースのグラフィックスモデルを使っており、今でもその思想・APIが残っている。だから、macOSではドキュメントをPDFに出力するのも容易なのだ。

その後、2008年には、PDF仕様がISO(国際標準化機構)の管理下に置かれ、PDF 1.7がISO 32000-1として国際標準化された。つまり、PDFの仕様はアドビではなくISOが決めるようになり、世界中の企業がアドビに依存せずに自由に実装できるようになった。つまり、アドビという一企業に依存した仕様ではなく、普遍的な仕様になり、政府機関や行政でも利用されるようになったというわけだ。

こうしてISOの管理下に置かれるようになったことが、PDFが多くの人に使われるようになった理由であることは言うまでもない。

なお、一般的なPDFのほかに、政府などの公式書類を長期保存しておくためのPDF/A、印刷で使うためのデータを埋め込んだPDF/X(出版社が印刷所に入稿するときに使うのはこのPDF/X)、CAD図面の3Dデータを埋め込めるPDF/Eなど、特殊用途に使うPDF仕様もある。一般的に使うことはないが、「こういうものがある」ということを知っておけば、そうしたデータを受け取ったときに戸惑わずに済むだろう。

便利で容易に使えるPDFだが、実はけっこう複雑で、トラブルなく使うためには、その機能や特徴について、よく理解しておく必要があるのである。

村上 タクタ 編集者・ライター

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むらかみ たくた / Takuta Murakami

iPhone、iPadなどアップル製品を中心に扱うガジェット・テクノロジー系編集者・ライター。カリフォルニアでのWWDCやiPhone発表会には2016年頃から継参加。趣味の雑誌の編集者として、’92年から約30年で約600冊の雑誌を作ってきた。バイク雑誌『ライダースクラブ』に携わり、ラジコン飛行機雑誌『RCエアワールド』、海水魚とサンゴ飼育の雑誌『コーラルフィッシュ』、デジタルガジェットのメディア『flick!』『ThunderVolt』の編集長を務める。HHKBエバンジェリスト、ScanSnapアンバサダー。バイク、クルマ、旅、キャンプ、絵画、庭での野菜作り、日本酒、ワインと家族を愛する2児の父。娘はロンドン、息子は台湾在住。

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