全盲の大学生、当事者目線を生かして「起業」《"望まない進路しかない"のは教育現場に課題》「とりあえず混ぜればいい」インクルーシブ教育に一石

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「在学中は気づかなかったのですが、大学で教職課程を履修し教育的な視点で当時の授業を見直すと、『児童生徒のどの力をどの順序で獲得させるか』という細かい設計がされていることに気づきました。『あの授業はこういう狙いがあったのか!』と納得することばかりで、勉強の成果は生徒の努力だけでなく、授業の構造で決まる部分が大きいと学びました。寄宿舎での集団生活を通じて同級生と仲良くなり、勉強はもちろんそれ以外のさまざまな活動に一緒にチャレンジできた高校の3年間は、本当に充実していました」

高校3年の後期には、文部科学省の海外留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」でタイに2週間滞在。「タイで見るインクルーシブ教育」をテーマに現地の学校や就労施設を訪問した。

「トビタテ!留学JAPAN」でタイに滞在
「トビタテ!留学JAPAN」でタイに2週間滞在したときの写真(写真:川本さん提供)

筑波大学附属視覚特別支援学校での学びが、後の教育事業の基盤となった。学びの困難さは「やる気」の問題ではなく「仕組みの欠陥」として捉えるようになった。教育の質は、「体系的な設計」に基づくものであるという認識を得た。

同世代から聞いた「できなかった」という本音

「ブイリーチ」創設の原点は、川本さん自身の経験と、視覚に障害のある同世代の友人たちの厳しい現実にあった。

「私はたまたま学ぶ環境に恵まれましたが、ほかの視覚障害のある友人たちの話を聞くと、『やりたかったことがあったけれどできなかった』『本当は大学に行きたかったけれどかなわず、鍼灸の道に進んだ』などの話を多く聞きました」

こうした望まない進路を選ばざるをえない背景には、視覚に障害のある子どもたちが受ける教育現場の課題がある。例えば、数学や英語などの教科で高度な内容になってくると、教える側にも高いスキルが要求される。しかし、スキルのある先生が人事異動でいなくなってしまうなど、継続的なサポートが難しい現状があるという。

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