紙コップやボールペン、家電に"隠しカメラ"…日常生活に潜むサイバー攻撃が怖い、「現実とサイバー空間の境界があいまいな時代」の身の守り方

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中国製の家電、ガジェット、通信機器やスマートフォンには、以前からバックドアが仕掛けられており、これらの製品を使って国内外の利用者の監視を行っているという疑念が存在する。半分以上は都市伝説とみていいが、一党体制の中国においてその可能性の考慮と一定の対策は必要だ。

だが、このような通信モジュールは国産の自動車にも普通に搭載されている。むしろ通信モジュールがない車(乗用車含む)は、最新のセキュリティ基準を満たすことができないので、公道を走行することはできない。

BMS単体にSIMを装着する例(バッテリーの状態監視や走行データの収集が目的と思われる)はめずらしいが、存在さえ確認できれば対処は難しくない。この例のようにモバイルネットワークのような公共の回線を使うものならなおさらだ。

仮に発見された通信機能で遠隔でバスを故障させたりできるとして、それを実行するメリットがバス会社にも中国政府にも少ない。中国共産党がその気になればバスやスマートフォンを使ったテロ行為より、もっと効果的な手段がいくらでもある。脅威の1つではあるが現実的なリスクとはいいがたい。冷静な判断と対応が必要な事例と言える。

サイバーとリアルの境界を超えるデジタルツイン

スマートフォンの操作、店舗や銀行などでの端末操作、交通機関の改札情報、道路交通量のデータ、定点カメラ等の情報といったさまざまな行動や現象がインターネットには集められている。

現実世界の状態はネット上のデータとして反映されているわけだ。同時に、ネット上のデータを操作すれば、現実世界もそれに合わせて状態が変わることもあれば、変えることもできる。

このような世界をサイバーフィジカルシステム、あるいはデジタルツインという。大げさに聞こえるかもしれないが。ナビの渋滞情報や通行止め情報が変われば、おそらく車の流れは変わる。SNSでバズった店が混雑するといった現象は現実に起きている。

IT化が進んだ韓国では、街中の監視カメラをネットワーク化し、災害対策、交通規制、治安維持、迷子探しなどに活用する取り組みが広がっている。街中の監視カメラ・防犯カメラの画像を集約すれば、現在都市の人流がどうなっているか、現状がどうなっているかをリアルタイムで把握することができる。

例えば、認知症の老人が行方不明になったとする。親族が自治体に本人写真を提供すると、カメラネットワークの画像から顔認識を行い、行方不明者がどこにいるか、どこを通ったかがわかるというサービスを実装している。必要なら犯罪捜査に使える。

監視カメラの顔認識の例
監視カメラの顔認識の例(写真:筆者提供)

道路や街中の状況が映像でわかるので、災害時の避難誘導の管制を行うことも可能だ。建物などの3Dデータと併用すれば、都市全体のバーチャル空間を作り上げ、災害シミュレーション、誘導シミュレーションと組み合わせた警備・避難・交通管制もできるようになる。

3Dデータとカメラ映像等を組み合わせた都市管制システムの例
3Dデータとカメラ映像等を組み合わせた都市管制システムの例(写真:筆者提供)

監視社会の裏返しでもあるため、このような技術や都市行政を一概に肯定することはできないが、リスクは遍在するからこそ、やみくもに回避するのではなく、どうマネジメントするかが重要になってくる。サイバー空間はすでに社会の一部となっているからだ。つまるところ、リアルだろうとサイバーだろうと、必要なのは、特定の事例に惑わされることのない認知能力と情報リテラシーだ。

東洋経済Tech×サイバーセキュリティでは、サイバー攻撃、セキュリティーの最新動向、事業継続を可能にするために必要な情報をお届けしています。
中尾 真二 ITジャーナリスト・ライター

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なかお しんじ / Shinji Nkao

エンジニア、アスキーの書籍・雑誌編集、コンピュータ技術書籍の翻訳や企画出版を行うオライリー・ジャパン編集長を経て独立。現在はセキュリティ、自動車、教育関連のWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。

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