「串打ち3年は過去のもの?」価格高騰に逆行、名古屋で"うなぎ屋オープンラッシュ"の構造

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串打ち、割き、焼きといったうなぎ調理の基本技術は、誰もが習得できるよう再現性の高いマニュアルを作り体系化した。これにより、経験や出身ジャンルを問わず、一人前のうなぎ職人を育成できる独自の研修システムを確立したのである。

調理スタッフの多くは、もともと和食以外の分野であるパティシエやパスタ、ステーキ、中華などの出身者であった。初めのうちは失敗も多く、練習用のうなぎを無駄にしてしまうこともあったが、マニュアルに基づく反復練習を重ねることで、着実に技術を身につけていった。その結果、現在では誰もが客前で提供できる水準にまで成長している。

「もともと私も現場出身で、うなぎの調理について研究を重ね、技術の向上に努めてきました。スーパーやファストフードのうなぎとの違いは、“職人の技”を体験していただける点にあります。今後も、さらなる腕の研鑽を重ね、一層おいしいうなぎを提供できるよう努めます」(清水さん)

蒸さずに焼く“地焼き”うなぎのおいしさを広めたい

「美濃金」の特徴は、うなぎ半身を使ったリーズナブルな「小丼」(2500円)や、「ひつまぶし小」(3200円)があること。新規参入だけに敷居を低くすることで店に足を運んでもらいたいという戦略でもある。

ちなみにうなぎを丸ごと1尾使った食べ応えのある「上丼」は3900円、「ひつまぶし上」は4600円と、名古屋市内の有名店よりも安い。

もちろん、価格以前に肝心なのは味だ。皮はパリッと、身はふんわりと焼き上げたうなぎは絶品そのもの。タレも甘すぎず、辛すぎずバランスが秀逸。粒が大きい岐阜県産の美濃ハツシモ米の適度な甘みと粘りもうなぎのおいしさを引き立てている。

これは東京メトロ銀座線の末広町駅からほど近い場所で開店させた「鰻 炭焼 ひつまぶし 美濃金 神田本店」が大きなヒントになった。

「神田本店も各務原店と春日井店と同様に、うなぎを蒸さずに焼く“地焼き”で提供しています。神田本店を訪れるお客様の中には関東風のうなぎしか召し上がったことのない方もいらっしゃいましたが、炭火を使った地焼きのうなぎをとても気に入ってくださいました。地焼きのうなぎのおいしさを広めていくのもわれわれの使命ではないだろうかと思っています」(清水さん)

白焼きにした後、タレに数回浸しながら焼くのが名古屋風の地焼き。濃厚な味わいが後を引く(筆者撮影)

ということは、今後出店するのは関東風のうなぎが食されているエリア、つまり、静岡県静岡市から東ということになる。

が、東京進出となると、銀座マロニエゲートに「ひつまぶし名古屋備長 マロニエゲート銀座1店」が2007年に開店したのを皮切りに、「まるや本店 東京ミッドタウン店」(2019年)や「炭焼 うな富士 有楽町店」(2020年)、「うなぎ四代目菊川 ムスブ田町店」(2020年)といった有名店が軒を連ねていて、どの店も都内で多店舗展開している。すでに飽和状態にあるといってもよいだろう。

そうなると、神奈川や埼玉、千葉……さらに離れて北関東や東北への出店もあるかもしれない。いずれにしても名古屋から何百キロと離れた場所で地焼きのうなぎが食べられる店ができれば、いち名古屋人としては嬉しいし、誇らしく思う。

永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー

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ながや まさき / Masaki Nagaya

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。

地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに記事と写真を提供。

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