「初の女性首相」誕生は自民党結党以来の伝統的戦術 結党70年「新型の首相」が生まれる時代の共通点

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2021年9月の総裁選では、初出馬だった高市氏は、第1回目の投票で第3位に終わり、決選投票に残れなかった。そのために、安倍氏は上位2人の決戦で岸田文雄氏を支持した。その結果、岸田政権が誕生した。

周知のとおり、9カ月余が過ぎた22年7月、安倍氏は銃撃に遭い、命を落とした。それから3年3カ月後、高市氏は3度目の総裁選挑戦で勝利を握る。政権に到達し、併せて岸氏が創設に尽力した自民党の結党70年の記念日を総裁として迎えることになった。

最大の課題は「危機の宰相」として政権の舵取りを担った「初の女性首相」が、自民党結党後、初めてといわれる「本格的な少数政党並存政治」という極めて困難な政治情勢の下で、高支持率に表れた国民の期待感に応える成果と実績を残すことができるかどうかである。「初物」「新型」というセールスポイントに着目して、登場の当初は大きな期待を寄せながら、潮が引くように早々に背を向ける国民も少なくない。

「歴史に使われた指導者」の条件

それは過去の歴史が示している。実際に、就任時に高支持率を弾き出した上記の首相経験者を見ても、細川氏は約8カ月、鳩山由紀夫氏も約9カ月、第1次内閣の安倍氏と菅義偉氏はともに1年で政権から滑り落ちた。

政権の逆境はそれだけではない。岸田政権時代以来の「裏金問題を引きずる低迷・自民党」という実態も消えていない。国会では衆参ともに過半数割れで、やっと樹立にこぎ着けた日本維新の会との連立も、いつまで持つのか、不安が消えない不安定な政権だ。

政権の命運を占う場合、自民党内の政権基盤や連立与党の維新との関係も重要な要素だが、最終的にカギを握っているのは、国民の中の「大きな民意」である。「声なき声」も含めた幅広い民意の支持がなければ、「自維」連立も風前のともしびとなる。

「民意との結託」で、決め手となるのは、高市首相が「歴史に使われた政治指導者」となりうるかどうかだ。古今東西、時代の要求に応える政治に取り組み、その結果、歴史的な役割を果たしたとき、そのリーダーは「歴史に使われた政治指導者」と呼ばれ、高い評価を得る。

それには何よりも正確な現状認識と国民のニーズの的確な把握が不可欠だが、時代の要求に応えるのは、状況に合わせて路線や手法を変えることではない。追求してきた政策と姿勢が必要とされる時期にチャンスを手にして、それを果敢に実行する能力と力量と手腕が問われる。

高市首相が「歴史に使われた政治指導者」として評価を手にする実力の持ち主かどうか。民意はその一点を凝視している。

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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