未来のクルマはステアリングがいらない? 日産が発表した、自動運転のコンセプトカー

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ドライビングを楽しむMDモード(上)と、映像視聴なども楽しめるPDモード(下)。モードに応じて変化する

デザインダイレクターの森田充儀氏は、IDSコンセプトについて「このクルマは『マニュアルドライブモード』と『パイロットドライブモード』で、異なる2つのインテリアを持っています。これは、私たちが考える自動運転を表現するうえで、絶対に必要な考え方でした」と振り返る。

インテリアはモードに応じてトランスフォームし、MDモードでは、ドライビングを楽しみためのコックピットのスタイルを形成。PDモードでは、ステアリングがインストルメントパネルに格納され、代わりに大型モニターが出現する。映画やテレビの視聴はもちろん、4つ備わるシートも向き合うように回転し、よりリラックスした状態で自動運転での移動を楽しむことができる造りとなっている。

60kWhという大容量のバッテリーを搭載するIDSコンセプトは、EVゆえに走行中のCO2排出がゼロであるが、同時にクルマの死亡事故ゼロを目指す「ゼロ・フェイタリティ」の実現も目指している。それを可能にするのが、このクルマに搭載される「全方位運転支援システム」と呼ばれるものだ。

発表されたリリースによれば、IDSコンセプトは車両に搭載されたセンサーにより、自分の周りの状況をつねにモニタリング。リスクの芽をドライバーよりも早く察知し、危機を知らせ、間に合わないと判断した時はシステムが介入して事故を未然に防ぐ。さらに車両に搭載されたAIが、現在の運転シーンを正しく把握したうえで、先にある状況を予測。その予測に基づき、安全で正確な運転行動を取るという。

AIが「認知」「判断」「操作」し、安全な運転行動を取る

交通事故の9割以上は人為的ミスから発生していると言われているが、IDSコンセプトは人間をはるかに超える能力でAIが「認知」「判断」「操作」し、あらゆる状況を複合的に見て冷静に行動する。悲しいかな人間は時に判断に迷い、動きが止まったりする生き物なのだ。

自動運転の未来

IDSコンセプトを公開するにあたり、日産の自動運転研究開発を指揮する飯島徹也氏は次のように述べている。

「第一弾として、2016年末までに、混雑した高速道路上で安全な自動運転を可能にする技術『パイロットドライブ1.0』を世界に先駆けて日本市場に投入します。2018年には、危険回避や車線変更を自動的に行なう複数レーンでの自動運転技術を搭載したモデルを世に送り出します。そして2020年までには、交差点含む一般道での自動運転技術の導入を計画しています。これらの自動運転技術により、若者から高齢者までが快適で胸を躍らせるモビリティ社会が到来することになるでしょう」

そういえば昔、「“やっちゃえ” NISSAN.」なんていうCFがあったなあ、と懐かしむ余韻を楽しむ間もないくらいに、自動運転の未来はもうそこまで来ている。

(文:秋月新一郎)

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