「浅いレベルの調べ学習」で終わってしまいかねない…正解がない「探究学習」の授業に"社会問題知るツール"を取り入れた学校で起きていること

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その結果、学校や業者が用意したプログラムをこなすだけに終わっていたり、単なる調べ学習になっていたりするケースも決して少なくありません。

田中茂範 慶應義塾大学名誉教授
田中茂範(たなか しげのり) 慶應義塾大学名誉教授/コロンビア大学大学院で言語学と教育学を学び、1983年に教育学博士号を取得。茨城大学教養部を経て、1990年に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の創設に参加。言語コミュニケーション論、認知意味論などの講座を担当。コロンビア大学でJohn Deweyの著作に出会ったことをきっかけに、探究やプロジェクトに深い関心を抱くようになる(写真:本人提供)

実際、ある学校で、探究の時間は何をしているのかという質問に、「何かよくわからないことをしている」と答えた生徒がいました。本来、探究学習は「日常生活や社会生活に目を向け、生徒が自ら課題を設定する」ということを目標にしているのですが、そこに至るまでの適切なサポートがないと、浅いレベルの調べ学習で終わってしまいかねないのが現実です。

しかし、正解を教える教育に慣れている教員にとって、正解がない授業を設計し評価まで行うのは、なかなか簡単ではありません。

田中氏は、「高校で探究学習が始まって3年、探究活動の第2段階に入る時期だ」として、メソッドから評価方法まで伴った本格的探究活動プログラムを作りました。

メソッドは次の4段階。とくに物事の捉え方、考え方は探究活動をする上で欠かせませんが、それを助けるのが問いの設計です。

Part 1 現状を知る (SDGs社会論)
Part 2 物事の捉え方・考え方を学ぶ(視点、創造的思考)
Part 3 探究活動のしかたを学ぶ(個人探究、協働探究、Discussion)
Part 4 自分の探究(研究)を行う(課題設定、リサーチクエスチョン、研究方法、先行研究、論文の書き方)

「何が起きているか?」「どのような状況か?」といった記述的問いで現状を視察し、「なぜそうなるのか?」「どのような要因が関与しているか?」といった分析的問いで原因を掘り下げ、「他の現象とどう関連するか?」「全体としてどう理解すべきか?」といった統合的問いで、枝を広げ、つながりを発見し、時間の流れを理解できる20の問いを用意しました。

田中氏は、「この問いは、どんなテーマにも共通して使えるし、物事を多面的に見る思考方法が身に付く」と言います。

これは専門的には意味空間分析といい、生徒の探究活動だけでなく、社会人にも欠かせない物事の捉え方であり、今後AIを活用していく際にも使える問いです。

生徒それぞれの興味を社会につなぐ“超”探究実践ツール

そして、社会の現状を知るツールとして採用したのが、RuleWatcherでした。これは、世界100カ国以上の政府・国連関係機関・NGO等、信頼性のおける公的機関から発信される環境・人権といった社会課題ごとの最新の一次情報を言語統一して一元的に閲覧できるツールで、それらを分析できる機能も備わっています。

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