「カリスマ池田大作氏なき公明党」が下した"原点回帰"の決断、その波紋がもたらす《政界再編含み》の3つの政局シナリオ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

第1のシナリオは、高市氏が首相指名を受ける展開だ。野党の統一候補選びがまとまらず、1回目の投票では各党が自党の党首の名を書く。上位2人の決選投票で、高市氏と立憲民主党の野田佳彦代表が争う。公明党、日本維新の会、国民民主党などが1回目と同様、自党の党首名を書けば「無効票」となって、有効票で多い高市氏が首相に指名される。

直ちに組閣が行われ、自民党の単独内閣が発足する。政権運営は極めて不安定で、内閣不信任案が出されれば可決される公算が大きい。その場合は内閣総辞職か、衆院の解散・総選挙につながっていく。

野田佳彦と玉木雄一郎
立憲民主党の野田代表(左)や国民民主党の玉木代表(右)が首相に選ばれる可能性も出てきている(写真:ブルームバーグ)

第2は、野田氏に国民民主党や維新などの野党が乗って、高市氏に勝利するシナリオだ。野田政権が発足し、自民党は野党に転落する。公明党が野田内閣に加わるか、閣外協力するかが注目されるだろう。

第3は、国民民主党の玉木雄一郎代表を首相とする政権が発足するシナリオだ。高市総裁が誕生した当初、自公政権に国民民主党が加わる展開も予想されたが、公明党の連立離脱でその前提が崩れた。自民党と国民民主党が連立を組んでも過半数には届かないので、その組み合わせはなさそうだ。

立憲民主党と維新などが玉木氏を推せば、決選投票で高市氏を上回る計算になるので、その流れで玉木政権が誕生する可能性が出てきた。非自民連立政権である。国民民主党の公約である「年収の壁」の引き上げや物価高対策のガソリンの暫定税率廃止などに着手するだろう。

「石破の乱」が起こるケースも

こうしたシナリオ以外にも、石破首相らが高市総裁に反発して独自行動を起こすケースなども考えられる。臨時国会での首相指名に向けて、与野党の多数派工作が繰り広げられる。

一連の政治大乱の底流には、裏金事件で十分な真相解明や責任追及ができなかった自民党の統治能力の欠如に加え、物価高に有効な対策が示せない政治全体への国民の不信がある。自公の過半数割れから自民党総裁の交代、そして公明党の連立離脱と続いた政局の激動は、さらに政界再編につながる可能性が出てきた。

政治に対する国民の信頼を取り戻せるのか――。すべての政治家に重い課題が突きつけられている。

星 浩 政治ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ほし ひろし / Hiroshi Hoshi

1955年生まれ。東京大学教養学部卒業。朝日新聞社入社。ワシントン特派員、政治部デスクを経て政治担当編集委員、東京大学特任教授、朝日新聞オピニオン編集長・論説主幹代理。2013年4月から朝日新聞特別編集委員。2016年3月からフリー。同年3月28日からTBS系の報道番組「NEWS23」のメインキャスター・コメンテーターを務める。著書多数。『官房長官 側近の政治学』(朝日選書、2014年)、『絶対に知っておくべき日本と日本人の10大問題』(三笠書房、2011年)、『安倍政権の日本』(朝日新書、2006年)、『自民党幹事長』(ちくま新書)など。

 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事