消費を下支えするために性急に社会保障制度を整えたい当局。混乱防止の方策も必要に。

中国政府が都市における事業者に社会保険への「強制加入」を求める措置が波紋を呼んでいる。そのきっかけは、8月1日に最高人民法院(最高裁判所に当たる)が「労働争議案件の審理への法律適用に関する解釈」およびそれが適用される具体的な案件について発表したことにある。
この新しい法解釈は9月1日より施行され、それによってこれまではグレーゾーンとされていた被雇用者の社会保険への未加入が明確に違法とされる。このことが零細な企業や個人事業主の経営を直撃するのではないか、という懸念が広がっているのだ。
適正な社会保険料を納めた企業は3割程度
ただ、「社会保険への加入が強制化される」という表現は厳密には正しくない。例えば養老年金であれば、都市部の被雇用者が加入する都市職工基本年金はもともと強制加入とされていたからだ。
一方、都市の非就労者や農民を対象とした都市・農村住民基本年金は任意加入であり、その給付額も非常に不十分なものでしかない。これに対し、強制加入である都市職工基本年金と公務員や公立学校の教師などが加入する公務員基本年金は、比較的充実した保障を提供しているといわれてきた。
しかし都市職工基本年金にも問題があった。これまでは労働者が雇用主と合意して契約を結べば、双方の保険料の支払いが免除されるなど、実際には「強制」する力が弱く抜け道が多く存在していたからだ。中国の社会保障制度に詳しいニッセイ基礎研究所の片山ゆき氏によれば、社会保険料を適正に納めている企業は全体の3割程度にすぎないという。
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