「まるでアニメの世界にいるみたい」と訪日客が歓喜!外国人向け学校体験「君ノ高校」は、”日本人も唸る”クオリティだった

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

そのため、クラスでイベントを開催しても、あまり乗り気でない学生がいることも知っていた。

しかし、君ノ高校の書道の授業では、日本語を書くことにまだ慣れていない学生のために写し書き用の練習見本が用意されており、自由に好きな漢字を書きたい学生には、そのように書かせるなど、それぞれのスタイルに合わせた対応がなされていた。わからないことがあれば、クラスメイト役の俳優に質問できる環境も整えられている。

冷房がない環境で設定を楽しむ「留学生」

冷房のない廃校という環境のため、学生たちが途中で疲れてしまうのではないかとも思われたが、体育の授業を含めた6時間のプログラムを、全員が笑顔で最後までやり遂げていた。

「留学生」といっても、中には20代半ばの大人もいる。途中で高校生を演じるのが恥ずかしくなって脱落する人がいてもおかしくはない。しかし、参加者はみんな「こんな経験は二度とできない」と、その瞬間を噛みしめるように、日本の高校生活を満喫していた。喫煙者もいるはずだが、設定を守ってか誰もタバコを吸わない。

その背景には、スタッフの高い英語力がある。俳優たちが流暢な英語で留学生と対等に話すのはもちろん、給食や書道セットの片付けを担当していたアルバイトの女性も、積極的に英語で話しかけていた。聞けば、もともと英会話講師をしていたという。

また、アルバイトスタッフも、体育の授業中に「2人1組」になれなかった学生のために、実際にプログラムに参加してフォローしていた。こうしたスタッフ一人ひとりの細やかな気配りと努力によって、君ノ高校は訪日外国人観光客から高い評価を得ているのだろう。

「この事業は、地域ににぎわいを生み出すことが目的なので、今後は例えば近所のおじいちゃんやおばあちゃんなど地域の方々にご協力いただき、ベーゴマやお手玉、たこ揚げなど昔の遊びを教えてもらいながら、海外から来た方々が日本の文化や人のあたたかさに触れ、国際交流が生まれる場にしていきたいと考えています」(岩澤氏)

この日の最後、卒業式で学生たちが卒業証書を受け取り、体育館を後にする中、ボランティアとして留学生と一緒にプログラムに参加していた日本人の女子大生が、韓国からの留学生に語りかけた。

「夢が叶いましたね」

留学生は、その瞬間をかみしめるように、ゆっくりと笑顔で「はい」と応えていた。

千駄木 雄大 編集者/ライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

せんだぎ・ゆうだい / Yudai Sendagi

編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。奨学金、ジャズのほか、アルコール依存症に苦しんだ経験をもとにストロング系飲料についても執筆活動中。奨学金では識者として、「Abema Prime」に出演。編集者としては「驚異の陳列室『書肆ゲンシシャ』の奇妙なコレクション」(webムー)なども手掛ける。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)。原作に『奨学金借りたら人生こうなる!?~なぜか奨学生が集まるミナミ荘~』がある。毎月、南阿佐ヶ谷トーキングボックスにて「ライターとして食っていくための会議」を開催中。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事