野副・富士通元社長の賠償請求、東京地裁が訴え棄却、野副氏は控訴へ

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野副・富士通元社長の賠償請求、東京地裁が訴え棄却、野副氏は控訴へ

4月11日、東京地方裁判所の615号法廷。裁判官の判決に、富士通の元社長、野副州旦氏は目をつむり手で顔を覆った。野副氏は虚偽の情報を元に解任に追い込まれたとして、同社と間塚道義会長、秋草直行・元相談役など幹部4人を相手取って2010年提訴。その一審判決は野副氏側の主張をすべてを棄却するものだった。

野副氏側は、親交のあったファンド関係者が反社会的勢力と関与している疑いがあるとして秋草相談役らに密室で解任を強要されたうえ、病院やホテルに幽閉させられたと主張。富士通と間塚道義会長、秋草直之相談役、大浦溥相談役、山室惠監査役に3億8000万円の損害賠償の支払いと全国紙への謝罪広告の掲載を求めてきた。

判決は「反社会的勢力との関係が真実か否かは問題ではなく、野副氏は自らの意思で辞任に応じた」というもの。野副氏が反社会的勢力と関係が疑われる人物と関わっていた以上、辞任を求めるのは妥当とした。また、辞任を求めたプロセスも強制的ではなかったと判断。幽閉されたという主張に関しても、外部の人と面会やゴルフをしていたとして認めなかった。

こうした判決に野副氏は「極めて残念」として、控訴する方針だ。外山興三弁護士も「ファンド関係者が反社会的勢力に関与している証拠はない」、「“疑い”は、いかようにも使える表現。(疑われるという理由だけで解任が妥当とされては)日本企業のコーポレートガバナンスが後退しないか不安」と反論した。

野副氏は社長就任期間中、独シーメンスとの合弁会社の買収、赤字のHDD事業を東芝に売却、半導体事業で台湾TSMCと提携など構造改革を次々に行った。そうした野副氏の大胆さが社内の反感を買ったと指摘する声もある。

※写真は記者会見する野副氏

(島田知穂 =東洋経済オンライン)

■富士通と野副氏をめぐる動き

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