野副州旦・元社長が富士通と現役役員などを提訴、係争は長期化・ドロ沼化

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野副州旦・元社長が富士通と現役役員などを提訴、係争は長期化・ドロ沼化

昨年9月に富士通の社長を唐突に辞任した野副州旦氏が、今度は富士通と現役役員などを相手取って訴訟を起こした。

野副氏は8月24日、富士通と同社相談役の秋草直之氏、取締役の大浦溥氏、会長の間塚道義氏、監査役の山室惠氏を相手取り、総額で約3億8000万円の損害賠償の支払いと全国紙への謝罪広告掲載を求めて、東京地方裁判所に訴えを提起した。

野副氏の主張の要旨は以下の4点。

(1)訴訟の対象となった秋草氏らは、野副氏と面識のあるとされるファンド関係者が反社会的勢力に関与しているという情報の真実性を十分に確認・調査しないまま、野副氏を富士通の社長として不適任だとして、退任させるべく謀議を繰り返し、その手段について協議を重ねた。

(2)秋草氏らは(1)の謀議に基づき、09年9月25日開催午前9時開催の富士通の取締役会の直前に、野副氏を社内会議室に何らの事前予告なく呼びつけ、根拠のない情報を基に、野副氏に対し社長を辞任するように強制・脅迫した。また富士通にも法人としての責任がある。

(3)秋草氏らは、野副氏の辞任について虚偽の理由を開示したうえ、野副氏を病院に幽閉するなど人格権を侵害した。

(4)以上の不法行為により、野副氏は以後の報酬を受領する権利を失い、3億8000万円を超える損害を被り、また同氏の人格権を侵害された。

野副氏は、退任から半年たった今年2月以降、自主的な辞任ではなく意図的な誘導に乗せられ辞任させられた、としてたびたび富士通側に事情の説明を求め、原職への復帰を求める仮処分の申請も行った(仮処分については神奈川地裁川崎支部により却下された)。

富士通側は、反論会見を開くなどし、一貫して野副氏の主張を突っぱねてきた。だがその一方で、4月1日をもって秋草氏が17年間つとめた取締役を降り、コンプライアンス遵守を監視する立場であった社外取締役、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏らも取締役を降り、一応のけじめを付けたように見えた。

ただ、野副氏にしてみれば、反社会的勢力とのつながりを持った元社長という汚名を着せられたまま、自身の名誉は回復されていない、というのが、訴訟に至った背景だろう。

富士通にとって、これまでのところ、この一連の騒動によって受けた直接的な傷はほとんどない。社長辞任理由の虚偽情報開示について、東証から口頭で注意を受けたにとどまり、実務上も、株価にも影響がない。とはいうものの、トップ人事をめぐる不透明さは、社員のモチベーションや企業イメージにも関わる問題だ。

4月に就任したばかりの山本正己社長にしても、自身がまったく関与していなかった元社長の辞任騒動に巻き込まれ、気の毒というほかない。山本社長が推進している富士通の中期経営戦略は、野副社長時代に作られたものをほぼ踏襲している。

富士通は、早期に何らかの手を打ってこの問題を終結させ、以後、クリーンなイメージを作る努力をすべきだろう。なお、富士通側では「訴状が届いていないため、コメントは差し控える」(広報IR室)としている。

(小長 洋子 =東洋経済オンライン)

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