「小1プロブレム」に効果、港区が全区立小に導入した"予算不要"の「プレクラス制度」とは? 入学後1か月の様子を見て「本クラス」を編制

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「何事も新しい取り組みには細かな変化が伴いますが、目先の負担を理由にして改革に取り組まずにいるほうが大きな損失につながりかねません。とくにプレクラス制度は難しい施策ではなく、どの学校でも実践できるものです。子どもたちが環境の変化に多少戸惑ったり、5月に一時的に事務作業が増えたりしても、偏りのあるクラス編制から学級崩壊に至ることを防ぎ、その後の11か月の学級経営が安定する可能性が高まることを思えば、児童にも教員にもメリットが大きい施策だと言えます」

自治体の財政状況に左右されず、成果が期待できる制度

港区教育委員会人事企画課長の大久保和彦氏は、区一律での導入に踏み切った2025年度の取り組みを振り返り、「プレクラス制度は予算をかけなくても実施できる、効果のある制度だと感じている」と話す。

大久保和彦(おおくぼ・かずひこ)
港区教育委員会事務局学校教育部 教育人事企画課 課長

港区には全19校の区立小学校があり、単学級の1校を除く18校で25年度はプレクラス制度を実施。1校のみ「仮クラスのままの運営で支障がない」との判断から5月のクラス替えは実施しなかったが、そのほかの17校ではプレクラス期間の様子を見て5月に本クラス編制を実施した。教員からは「学年全体でバランスの取れた学級編制ができてよかった」「学年の教員全員で子どもを見られるようになった」といった反応が寄せられているという。

白金小学校のみで実施していたプレクラス制度を全区立小学校に導入するにあたっては、制度についてのリーフレットを作成するとともに、校長会での説明を行ったことで、大きな混乱はなかったという。

2021年度と2022年度は校長として、2023年度と2024年度は教育委員会事務局学校教育部長として、白金小学校のプレクラス制度を見守ってきた吉野氏は、「プレクラス制度は環境を整えるための施策であり、学級経営の苦労がゼロになるというパーフェクトな施策ではない」としながらも、その成果について次のように話す。

「白金小学校で2021年度から2024年度まで毎年1年生を担当した教諭に話を聞いてみたところ、『ある年度だけは仮クラスのままでもうまく学級経営ができたかもしれないが、残りの3年間は仮クラスのままでは大変だったと思う。本クラスに編制し直すことができてよかった』と言っていました。プレクラス制度は難しい取り組みではなく、予算をかけずに効果が得られる“タダ施策”なので、自治体の財政状況に関係なく運営できます。管理職や行政担当者の新しいことに取り組もうとする勇気、そして先生方の良好な人間関係があれば、どの自治体でも成果を出しうる施策だと言えるのではないでしょうか」

導入初年度においては順調な滑り出しを見せたと言える、港区のプレクラス制度。今、都内外の教育委員会などからの問い合わせも多く寄せられており、小1プロブレムに対応する1つの取り組みとして注目が集まっている。

(文:安永美穂、写真:編集部撮影)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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