「日本の生産性が低いのは、労働者のせいなのか」業績は右肩上がりでも生産性が低い原因

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また「Off-JT費用」は2008年に年額2.5万円を記録するも2020年は7000円。「自己啓発支援費用」は2009年以降3000~6000円である。平均して年合計2万~3万円かけていたら良いほうなのだ。非正規雇用の増加も関係している。通常、企業は非正規雇用者に教育訓練費を払わないからである。

日本企業は設備や人材育成への投資を控えており、ゆえに生産性の成長率が鈍化している。簡単に言えば最新鋭の練習設備が揃ったスポーツチームとボロボロの道具を使いまわすチームを比べたら前者のほうが生産性が高く、日本は後者なのだ。

職場環境が整備されない限り、個人の努力による生産性の向上には限界がある。戦中の日本を象徴するフレーズ「竹槍」が想起される。戦況が悪化するなか国民に竹槍での訓練を奨励したという竹槍よろしく、バブル崩壊以降一貫して日本企業は組織に投資していない。こうした消極姿勢は厚生労働省のレポートでも指摘されている。

「我が国の企業においては現場レベルのコスト削減に関連したIT導入効果は確認されるものの、上層部の意思決定など経営面や新規開拓などの価値創造の場面で他国よりもIT導入効果に見劣りがみられるとの報告があり、結果、企業改革への消極姿勢がIT導入を遅らせている可能性が指摘される」
(「労働経済の分析」第2章 第3節、2015年9月)

日本企業の業績は右肩上がりだが

現代日本が、戦時中の「竹槍」状態にあるという話をした。こんなことを言うと日本への悲観が強まるかもしれない。現代の若者が共有してきた負の神話である。もう日本はダメなんだ、経済が終わっているんだ、と。

しかし真逆のデータもある。図表は経営学者の青島矢一氏(一橋大学)らの論文から引用したグラフで、企業の財務指標として代表的な現金・預金、利益剰余金、経常利益率すべてが2010~2022年のあいだで右肩上がりであることがわかる。日本企業は一概に調子が悪いわけではないのだ。

図表「日本企業の財務は悪くない?」(『若者恐怖症』p.124より抜粋)
図表「日本企業の財務は悪くない?」(『若者恐怖症』p.124より抜粋)
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