「日本の生産性が低いのは、労働者のせいなのか」業績は右肩上がりでも生産性が低い原因
日本、どの分野の投資が足りてないんでしょうか。ITですか。IT遅れてる気がしますもんね日本。研究開発ですか。イノベーションヤバいですもんね日本。
いや、全部なんです。特に低いのは「経済的競争力資産」への投資だ。ブランド構築のための広告宣伝、組織改編、Off-JT(日常職務をともなわない教育訓練)などが含まれ、これらの投資が英米独仏に比すると著しく低い。Off-JTについては肌感覚で思い当たることがある。
数年前、リスキリングという概念が流行った(流行りで終わらせてはいけないのだが…)。雑に言えば社員が勉強をし直すというニュアンスだ。
ニュース番組を観ていると、先進的にリスキリングに取り組む企業が紹介されていた。
「うちの会社では、昼休みを活用して社員が自主的にリスキリングをしています」
昼休みは休みですよ。休みましょうよ…。似たような話に若者も直面している。既に内定を得た大学4年生。単位もほぼ取り終えたそうなので、暇ですか? と訊いたら、「いや忙しいです。土日が埋まっています」と。土日、何があるの? と訊くと、「内定先の研修があるんです」。入社前研修である。
何の研修? と訊くと資格試験だという。給料出るのと訊いたら「出ません」。交通費とテキスト代は出るらしい。ちなみに東証上場企業である。怪しげな謎の企業ではなく、いっぱしの大企業だ。
むろん事情はある。仕事をするうえで資格が必須の業界なので、早く取るに越したことはない。どうせ学生は暇でしょというのも、まあ。でも、あくまで内定者の自主性に任されるべきではなかろうか。仕事の勉強のために無給で土日を拘束するのは正当だろうか。
いやね、それはアナタが大学教員で世間知らずだから言えることなんですよ、と言われたら黙るしかない。すみません。大学教員なんて偉そうにモノ言うわりに世間知らないですからね(と、ネットやレビューに書いていただいたことは何度かあります)。
でもそれは「世間」だろうか。「社会の厳しさ」ってそういうことだろうか。社員への投資をケチることが「社会人として知っておくべき常識」なのだろうか。
竹槍化する日本
企業の人材育成への投資は過去と比べても後退している。労働者ひとり当たりの「教育訓練費」は1991年までは上昇し続けピークを記録。以降なだらかに下降し、2021年には70年代以来の過去最低を記録した。
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