掟破り?「はなまるうどん」の他社割引券吸引戦略!《それゆけ!カナモリさん》

 

■上に政策あれば…

 「上に政策あれば、下に対策あり」。これは本来、どんなアーキテクチャーやルールを行政や国が設定しても、市民や企業はその穴を見つけて、案外うまいことやるものだ。といった意味で用いられる。だが、企業や市民にとって、いま、アーキテクチャーやルール設定者として感じられるのは、「市場」ではないだろうか。それもとびきり大きいグローバルマーケット。もはや政府でさえコントロールができない巨大なシステムが、私たちの日常や企業活動に大きく影響している。

はなまるの取り組みは、そのルール設定を書き換えてしまう、という点が面白い。今まで、クーポンや割引券は発行したお店でしか使えないものだった。そのルール設定では、割引のできる、クーポンを大量に配るコストを持つ、体力のある企業が優位になる。「ほかでも使えますよ」となった瞬間、プレイヤー(消費者)の行動は変わる。はなまるの取り組みを模倣する企業が出てくれば、割引券やクーポンは金券に変わる。

こうして先駆者が現れると、「なるほどそれもありか」と思えてしまうのだが、実際に考え、実行に移すまでは相当大変だったと想像する。ただ、発想としてはぜひマネをしたい。あるルールが「つまらない」「くだらない」「不便」「不快」と思ったとき、そこに順応するのではなく、穴をついて、一挙に書き換えることはできないか、という視点だ。

例えば今の「就職活動」。新卒一括採用というまさに“クソゲー”をやらされ、その中で順応していくことに必死になる。これを書き換えてしまう戦略はないか、考えてみるのも面白い。

筆者は、はなまるの施策には第2幕があるように思えている。「期限切れの券」という枠を取り払い、期限内であっても、どこの券でも持ってくれば50円引きという展開で、一層他社の「市場資産=顧客資産」を積極的に、自社はコストをかけずに取り込むという展開だ。市場には各種の券が満ちあふれている。それらを全て自社のビジネスチャンスにするのである。割引券システムのハッキング、だ。

他社チケットで割引。通常では考えられない逆転の発想が厳しい競争環境においては求められるのである。常識にとらわれず、自社の攻めどころを考える姿勢をはなまるうどんから学びたい。

参考文献:『逆転の競争戦略』生産性出版・山田英夫 著

  

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2012年3月23日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。

 

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