仕事減らない意外な要因、大阪市「教員の働き方満足度」日本一に向けて出したある通達 人事権も予算権もない校長にできることは?

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薄皮を剥がすように少しずつ改善して余白を作る

しかし、学校は基本、子ども達のための場所であり、教師の仕事の本分は授業をすること。子ども達が安心していられる場所であるためにも、よい授業をするためにも、そこで働く教員の心身の健康は欠かせません。

やはり、学校がそこに関わる人にとって安心して過ごせる場所になることが大切。そのためにも余白が必要です。しかし、教員不足も簡単には解決しそうにもない中、教員の働き方改革なんてできるのでしょうか。

原氏は、「学校の働き方改革は、薄皮饅頭の皮を一枚一枚剥がすように進めていかざるを得ない」と言います。

大宮西小学校では今年度から日課表を変更し、始業時間を8時50分から8時40分に、中休みや昼休み掃除の時間をそれぞれ少しずつ短縮し、終業時間を15時40分から15時10分に変更しました。また8時30分〜17時で固定されていた教員の就業時間を8時〜16時半というフレキシブルタイムも選択できるようにしました。

これまでもほとんどの教員が8時前には出勤していて、朝の30分は無給になっていたのを勤務実態に合わせたのです。現在は、半分以上の教員がその時間帯を選択しており、会議も16時半までに終了するように改善しました。

ここで1つネックになったのが、給食の開始時間を15分早めるための調理員の方々の勤務時間の変更でした。ルール上学校職員の勤務時間は、8時半から17時となっていて、それを変更することはできないということでいったん見送りになったのです。

しかし、実際は職員も8時には勤務を開始している勤務実態とかけ離れていることから、徹底的に調べたところ、学校教職員の勤務時間を決める権限は学校長にあることが判明。結果的に、調理員も8時から16時半の勤務に変更することができたのです。

こうして薄皮を剥ぐように生み出された30分の余白。わずか30分ですが、この価値は大きく、働き方改革の突破口にはなったと原氏。子ども達からも先生からも好評だそうです。

教師も親も地域もマインドを変える必要あり

「不登校やいじめが多発し、外国籍の子どもも増加している。もはや従来どおりは通用しません。学校が大困りの状態に置かれている今、前例主義に囚われていては、前に進めません。かといって、人事権も予算権もない校長にはできることが限られているので、一気に改革を進めることは難しい。だから、このように少しずつできることを積み重ねていくことしかないのです。でもそれをすることで、現状を改善していくことはできる」と原氏。

原氏は以前紹介した、「学び合いの授業」を今の勤務先でも取り入れていますが、余白を作ったことで先生にも余裕ができて、本来の業務である授業改善にもよい影響が出ているようです。結果的に子どもたちが幸せであり、その変化を感じられたら、保護者も満足するでしょう。遠回りのようで、教職員の心身の健康を取り戻すことが教育改革の近道でもあるのです。

今回の取材を通して、学校というシステムが崩壊一歩手前だということを再認識しました。子どもたちが安心して学べる場所を維持していくためには、もちろんさまざまな政策も必要ですが、悠長なことを言っている場合ではないのでは。地域の実情に合わせて、できることをしていく。そのトライを地域も保護者も一緒に支えていく。そんなマインドセットが必要ではないかと感じました。

(注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)

執筆:教育ジャーナリスト 中曽根陽子
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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