連立政権の命運を握った党勢も今は昔、崖っぷちの「公明党」が結党61年目の夏に迎えた《大転機》の深層

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そこで斉藤氏らは、国民が注目する物価高対策について、自民党とともに現金給付の必要性を訴える一方で、「独自に所得税の減税などを掲げて『減税も給付も両方行う』とアピールすることで劣勢挽回のきっかけをつかみたいと考えた」(党幹部)。

だからこそ、斉藤氏が第一声で「参議院選挙は物価高乗り越え選挙です」「減税と給付両方です」「責任ある減税を行っていきます」と訴えたのだが、その背景には「給付だけでは選挙を戦えない」という党内の強い危機感がある。

選挙戦略につきまとう「二枚舌」批判

ただ、こうした公明の選挙戦略には、他党やメディアなどからの批判が付きまとう。公示前日の日本記者クラブ主催の党首討論会では、記者クラブ代表との質疑の中で「公明は二枚舌ではないか」との厳しい指摘があり、斉藤氏が必死に釈明する場面もあった。

斉藤氏はこの党首討論会などで「参院選の目標」について、①全国比例で700万票の獲得、②選挙区7議席・比例代表7議席、と繰り返した。しかし、国政選挙での比例代表得票数は、ピークだった2005年の衆院選以降は減少が続き、昨秋の衆院選では596万票と現行制度となった1996年以降で過去最少となった。

こうした状況について、斉藤氏は「私自身、無党派層へ訴える努力が足りなかった」としたうえで、「これまで公明党の声が届かなかったところへ声を届ける戦略を考える」と語った。

それを具体化したのが、YouTubeでの「公明党のサブチャンネル」の立ち上げだ。同チャンネルでは「有名人との対談や党幹部の素顔紹介などで無党派層の取り込みを狙う考え」とされる。ただ、党内には「その程度の試みでは、党勢回復にはまったくつながらない」(若手議員)との悲観論も広がる。

「公明党のサブチャンネル」には「サブチャン、できるだけ攻めます!」とのバナーが掲出されている(画像:YouTube「公明党のサブチャンネル」より)

17日間の選挙戦が折り返し地点を迎える中、斉藤氏は街頭演説や講演で「自公過半数割れとなれば、大変な世界状況の中、(政府が)しかるべき決断ができなくなる」と自公政権継続の重要性を訴え続ける。しかし、自民党内から参院選後の「連立組み替え論」が相次いでいる。「斉藤氏に吹きつける“逆風”は、とても収まりそうもない」(選挙アナリスト)というのが現状だ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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