応募殺到!9割が不登校経験者の「都立立川緑高校」、8割の生徒が毎日登校する理由 「学校に来よう。授業に出よう」の真意とは?

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「自分たちの学校は自分たちで作るというのが本校の方針です。その背景には、『自分たちが社会を作る』という社会参画につながればという思いがあります」と石田氏は話す。

9割が不登校経験者、8割が毎日登校

同校の教育方針は共感を呼び、初年度の最終応募倍率は2.55倍と人気を集めた。一期生は全体の9割が不登校を経験しているが、8割の生徒が毎日登校しているという。まさに「行きたくなる学校」を実現していると言えるだろう。

そんな温かな学校をつくっている教職員たちをマネジメントするうえで、石田氏はどのような点を大切にしているのか。

「『楽しいからおいで!』がコンセプトなので、とにかく『よく来たね』というウェルカムの空気を大事にしようと、最初に目線合わせの校内研修を行いました。開校後はとくに『何でもいいから学校をよくしていこう』という組織風土の醸成を大事にしています。具体的には、1人の人間として接すること。私が思いやりを持って接すれば、教職員も生徒たちに思いやりを持って接するはず、というのが私の信念です」

小・中学校の不登校児童生徒の数は年々増え続け、34万人を超える。その中でのチャレンジスクールの意義や展望について、石田氏はこう語った。

「今の教育は効率や正解を求めすぎているのかもしれません。もっと子どもの試行錯誤をゆったりと受け止め、考えを聞き出していいのではないでしょうか。 ただ、法律違反など間違ったことには毅然とした指導が大切ですし、子ども自身が試行錯誤しながらどこまで許されるのかを学ぶことも重要です。チャレンジスクールのいい点は、生徒を受け止めるための柔軟な教育課程をマネジメントできること。中には普通科高校で取り入れられる取り組みもあると思います。そうした情報発信も本校の役割だと思っています」

再登校をゴールにしないことで救われる生徒がいる。その一方で、「学び直したい」「学校生活を取り戻したい」という思いを持つ子どももいる。同校の人気ぶりを見ると、「学校に来よう」というシンプルかつ力強い言葉を潜在的に求めている子どもたちも多いのかもしれないと思わされる。

同校は、2学期に転学者を10名受け入れる予定だ。船出したばかりの同校と、ここで学ぶ生徒たちの今後に注目したい。

石田和仁(いしだ・かずひと)
東京都立立川緑高等学校 校長
2000年東京都教員採用(高校・保健体育)、全日制高校や夜間定時制高校などに10年間勤務。副校長を1年、教育行政を10年経験し、校長5年目で2025年4月より現職

(文:吉田渓、注記のない写真:編集部撮影)

東洋経済education × ICT編集部

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