応募殺到!9割が不登校経験者の「都立立川緑高校」、8割の生徒が毎日登校する理由 「学校に来よう。授業に出よう」の真意とは?
そうした設計のおかげで、手厚いセーフティネットの仕組みも構築できている。YSWが常駐する冒頭の校内居場所カフェ、常時開いている保健室、スクールカウンセラー(SC)が週3日常駐する2つのカウンセリング室、個別相談用の6つのガイダンス室などを設け、生徒の不安や悩みを受け止め、気になる変化をキャッチして迅速に共有する体制が整っている。

「チャレンジスクールに応じたハードの設計と、人員などのソフトの充実。この2つがうまくマッチし、よいスタートが切れたと感じています」と石田氏は話す。
「社会参加に必要な力」を付けるため課題を先送りしない
興味深いのは、同校では「学校に来よう。授業に出よう」というメッセージを明確に生徒に伝えていること。学校説明会でも明言しているほか、制度にもその思いは反映されている。
例えば、1年次は1クラス30人に対して2人の担任を配置するほか、前述のように居場所を至る所に設けて生徒を受け止める体制を充実させているが、学校にいても授業に出なければ出席にはならない。校内別室指導室で過ごす場合も、事前に一定期間の利用申請をすればみなし出席となるが、基本的には欠席扱いとなる。

近年は「無理に再登校を目指さなくてもよい」という考えが社会にだいぶ浸透しているが、なぜ同校ではあえて「学校に来よう。授業に出よう」というメッセージを明確に打ち出しているのか。その真意について石田氏はこう語る。

「再登校をゴールとしないことで救われる生徒さんもいるはずで、その考え方は否定しません。ただ、本校が大切にしているのは、生徒たちが将来、社会参加ができるようにすること。私が以前勤務していた高校では全員がインターンシップを経験するのですが、協力企業の方に社会で求められる力についてお聞きすると、必ず挙がったのが『コミュニケーション能力・多様な人々との協働・アウトプット』でした。生徒がそうした力を身に付けて社会に出ていくためにも、課題を先送りにせず、学校に来ることが自立の一歩になると考えています」
だからこそ、自ら学校に行きたくなるような、魅力ある学びを取りそろえている。同校では文科省が定めた必履修科目や学校が定める学校必履修科目のほかに、多彩な自由選択科目を用意。自由選択科目として①生活・文化系列、②アート・デザイン系列、③人文・自然系列の3系列をそろえたほか、興味関心、進路希望に応じて選べる教養科目もある。

(写真:東京都立立川緑高等学校の学校案内より)
卒業に必要な74単位のうち、40単位は必履修科目や学校必履修科目が占める。残りは、生徒が自身の将来像をイメージして自由選択科目や教養科目から選び、自分なりの時間割を作る。