中国出身の私がNHK朝ドラ《あんぱん》を見た結果 戦争描写に感じる「抗日ドラマ」「中国の歴史記憶」との相違点
中国の戦争観では「抗日戦争の勝利」が強く意識され、長年、ドラマでは日本兵が「鬼(悪)」として描かれ、中国人民の勇敢さと犠牲精神が称えられてきた。戦争体験は「民族の痛み」として教育とメディアを通じて受け継がれている。
一方、日本では戦争は「敗戦」であり、「加害」と「被害」が交錯する複雑な記憶として語られる。庶民の苦しみや兵士の葛藤に焦点を当て、平和と反戦を訴える作品が多い。朝ドラ『あんぱん』のように、「戦時中にも善意があった」という柔らかな視点は、日中の歴史対話の糸口になりうる。
実際、中国でも一部のインテリ層は、日本の戦争映画やドラマの歴史への向き合い方に関心を示し、『ひろしま』『永遠の0』『この世界の片隅に』などがネットで話題になったこともある。
日中両国の戦争の記憶には、「語り方」にも「痛みの形」にも違いがある。だからこそ、「なぜそのような記憶が生まれたのか」を問い合い、互いに理解を深めていくことが大切だ。
映像や文学といった文化表現は、その対話の橋を架ける力を持っている。人間を見る視点さえ共有できれば、理解の扉はきっと開くだろう。
記憶を遡って、1980年代、日中両国は映画製作で積極的に協力し合っていた。国交正常化10周年を記念して制作された『未完の対局』のような作品は、その象徴といえるだろう。当時、多くの日本人俳優が中国で広く親しまれ、世代を超えて愛された。
私にとっては俳優の紺野美沙子さんが印象的だった。彼女が『未完の対局』に出演し、共演する中国俳優と並んでいる様子の写真は中国の映画雑誌の表紙を飾り、その凛とした美しさはいまも記憶に残っている。
日中両国の映画・テレビが協力する黄金時代はいつ再び訪れるのだろうか。
「あんぱん」の紙芝居シーン、中国人の受け止めは?

近年では、「抗日ドラマ」よりも日本のドラマに熱中する中国の若者が多い。
日本で放送中のドラマは、中国のネット上でしばらく経ってから視聴可能になり、しかもすでに中国語字幕が付いている(これは知的財産権を侵害する可能性がある)。中国で日本ドラマを楽しむ層の多くがアニメや二次元文化に親しむコアなファンだ。
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