セイコーエプソン、新興国の開拓で業績V字回復へ《オール投資・注目の会社》

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新興国進出には意外な敵 ビジネスモデルを転換

一方、世界市場ではエプソンはキヤノン、ヒューレットパッカード(HP)に次ぐ3番手。この状況を踏まえ、成長が見込まれる新興国進出を04年ごろから進めてきたが、思わぬ誤算があった。インクカートリッジの純正品使用率が、先進国に比べて著しく低いのだ。

「日米では9割近くが純正インクを購入しているのに対し、新興国の一部では6割にも満たない地域があった」(久保田健二専務)。調べると、改造業者がインクカートリッジを撤去し、そこに廉価な外部メーカーの液体タンクを外付けしている実態がわかってきた。

本体を安く売って、消耗品(カートリッジ)で稼ぐのが、従来のIJPのビジネスモデル。だが、ライバルはHPやキヤノンではなく、改造業者だった。ならば、と大容量タンクを付属させた製品を10年から投入して巻き返す。一度購入すれば、1万枚以上の印刷が可能になる。これが受けた。11年にはアジア市場での販売台数の約2割を占める水準になっている。新興国での販売は昨年の4カ国から、今後29カ国へ拡大する予定だ。

生産面では主力のインドネシア拠点を大幅増強、昨年の600万台から12年は倍以上の1300万台に増強する。従来の「必勝パターン」を大胆に転換し、先進国と新興国とで真逆ともいえるビジネスモデルを展開する同社には、成長余地の大きな新興国市場開拓への強い決意が感じられる。


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