米不足のフィリピンで選挙を前に備蓄米を放出して半値に、それでも負けたフィリピンの政権与党のケースは自民党の反面教師となるか
加えて日比ともに備蓄米の品質に首をかしげる人たちがいる。マルコス大統領の敵方となったサラ・ドゥテルテ副大統領は20ペソ米について「低品質で、人間用よりも家畜の餌に向いている」と批判した。
「あと1年たったら動物の餌になる」と備蓄米放出を揶揄した国民民主党の玉木雄一郎代表の発言と瓜二つだ。品質に問題はないと火消しに走る両政府の姿勢も似通う。
備蓄米を放出する両国は、地震や台風、火山噴火などが多発する災害大国である。緊急の事態への備えをどう回復するか、共通の課題となる。
両国でカギ握る生産、流通体制と輸入
米価格が高止まりする背景には、日比ともに生産体制と流通システムの懸案が横たわる。
国連食糧農業機関(FAO)によると、フィリピンの米生産量は年間約1270万トンに対し消費量は1720万トン。470万トンを輸入することで需給のバランスをとっている。フィリピンは世界最大の米輸入国だ。
対する日本は政府の補助金政策による生産調整で生産量、消費量とも約700万トンで帳尻があっていたはずだが、ここに来て実は生産量が不十分との指摘が相次いでいる。
フィリピンの場合、灌漑施設など農業インフラが貧相極まりない。買い上げ価格が安く、農業セクターへの投資が進まない。日本では事実上の減反政策が続き、生産抑制がされてきた。農家の高齢化が進み、規模も小さい。両国とも生産性の向上が米作りの課題だ。
マルコス大統領は米価格安定化対策として「密輸シンジケートと米の買い占め犯の摘発」を一番に挙げた。だが何十年も前から指摘されてきながら手が付けられなかった流通の闇に切り込むことは言うほど容易ではない。
日本でも生産者から消費者に渡る間に最大5次問屋までが介在し、中間マージンを増大させているとの指摘が小売店側から出された。政府はここにメスを入れることができるだろうか。
米の関税を抑え、輸入を促進すれば、量は確保できる。しかし、日比とも売価低迷に対する農家の反発は必至だ。政治に対する生産者団体の影響力は、日本の方がフィリピンより大きい。つまり輸入拡大に対する抵抗はより強い。
間もなく実施される東京都議選と参議院選の最大の争点は物価対策だ。米価格の行方が結果を左右しそうだ。
政府与党の思惑通り備蓄米の放出が一般米の値下げにつながれば、小泉氏を大臣に起用した石破政権の大きな得点となる。逆に安い米が行き渡らず、価格下落の見通しが立たなければ、フィリピン政権与党の二の舞となるかもしれない。進次郎劇場があおった期待に対する反動で、票を減らすことにもつながりかねない。
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