米不足のフィリピンで選挙を前に備蓄米を放出して半値に、それでも負けたフィリピンの政権与党のケースは自民党の反面教師となるか
他方、日本政府は通常、年間需要の約2カ月分にあたる100万トンをめどに備蓄している。だが「米は買ったことがない」発言で辞任した江藤拓農林水産相時代に放出を始め、交代した小泉進次郎農水相が「2000円」をぶち上げたときには、在庫は約60万トンに減っていた。
随意契約分がスーパーや小売店の店頭に並び始めているが、販売待ちの長い行列ができ、ネット販売はすぐ売り切れる状況が続いている。小泉氏は「備蓄米を無制限に出す」と繰り返し、約10万トンを残してすべて放出する方針を示している。備蓄米は果たして希望する国民に行き渡るのか。
備蓄米に頼る価格抑制は日比共通
日本政府は2000円米が呼び水となって他の銘柄米などの価格も下がることを期待しているが、放出が終わるまでに市場価格が沈静化するか、あるいは量的限界を見据える業者が一般米の値段を下げないか、現状ではまだ見通せない。
フィリピンで20ペソ米の販売が選挙に間に合ったとしても、選挙結果への影響は限定的だった可能性が高い。全国民に恩恵が行き渡るほどの量を店頭に並べることはできず、米価格全般への波及は限定的とみられたからだ。実際に日本以上に放出量が少ないこともあり、政府公認店以外で目立った価格下落効果は出ていない。
フィリピン政府は今後も備蓄米の放出を続ける意向だが、量の制約のほかにも、持続可能性に疑問が投げかけられている。
備蓄米は政府が1キログラム24ペソで農家から買い取り、精米した米を1キログラム45ペソで販売してようやく損益分岐点になるため、20ペソ米の販売で1キログラム当たり25ペソの逆ザヤが発生する。これを政府と自治体で負担するが、負担に尻込みして多くの自治体は手を挙げていない。
日本の農水省は5月26日、60キログラム当たり1万1556円で大型小売店などに売り渡す随意契約を結んだ。2024年3月の調達価格は1万2829円なので、やはり逆ザヤである。
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