大阪万博でイタリアと日本の職人文化を比較。グラフィックデザイナー原研哉氏らが語った両国ものづくりの“共通点”そして“違い”とは
高木氏と一緒に登壇したブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティンの総料理長、ルカ・ファンティン氏は13年間にわたりミシュラン一つ星の評価を維持するシェフ。
日本の食のクオリティの高さに驚いた一方で、食材やその使い方などが違うことにも驚かされ壁にぶつかったこともある、という。
その中で彼が到達したのが、物理的な食材が異なっても、イタリア料理の本質的な味覚の記憶や理解に基づいて、それを日本の素材でどのように構成し直すか再解釈するというアプローチ。
単にイタリアから食材を持ち込むのではなく、例えば日本産のオリーブオイルや塩といった、日本のシンプルで良質な食材を組み合わせることで、求めているイタリアの味覚を再構築できることがある。
例えば「日本のトマトとバジルに日本で作られたオリーブオイルと塩を加えるとイタリアの味になる」こともある、という。
彼はこれを「目をつぶってイタリアの味を想像する」という独特のプロセスで実践しているという。
文化を広める際には、オーセンティック、つまり純粋な本物を輸出入するという方法もあるが、一方で文化の本質を見極めてそれを再解釈・再構築する方法もある、という示唆に富んだセッションだった。
ラグジュアリー市場が品質の土台をつくる
3つ目のパネルは、イタリアの宝石ブランドPomellato(ポメラート)のCEOサビーナ・ベッリ氏と、伊勢丹三越グループのマーチャンダイジング部門マネージャー宍戸賢太郎氏によるもので、ラグジュアリー市場がテーマとなった。

ベッリ氏は自分の仕事を「喜びを調達すること」と紹介する。
「スライドに映るこれらの宝石は、どれも誰も必要としていないし、それなしでも生きられる」と述べながらも、人々が大金を費やすのはそれらが「感情に語りかけるから」だという。ポメラートの顧客の多くは「自分のジュエリーを自分で買う」という。
特別な瞬間を祝うため、あるいは自分自身を祝福するために購入する女性たちが多いという。「ジュエリーを身につけるために夫や恋人は必要ない」という。
宍戸氏の話も、こうした「感情」への語りかけが、高額の消費を促すという内容だった。
コロナ禍以降「良いお客様に恵まれ、最高益を上げ、非常に利益の高い状況が続いていた」という三越伊勢丹。しかし、今年の3月以降、「急激に数字が厳しくなっている」という。原因はインバウンド観光客の減少だという。
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