全国新幹線「海産物輸送」、鹿児島→大阪間に密着 明け方に水揚げした魚が昼過ぎには売り場に
加工を終えたカツオのタタキは、トラックで7時30分に市場を発ち、7時50分ごろに鹿児島中央駅「みどりの窓口」内に設けられた荷物輸送受付カウンターに到着。いよいよ新幹線に“乗車”する。今回はJR西日本・九州の荷物輸送サービス「FRESH WEST」・「はやっ!便」のスキームを利用して新大阪まで向かう。
折り返しで「さくら546号」となる列車がホームに入線してきた。カツオたちの席は車内販売などの準備を行っていた施錠可能な業務用室。冷凍・保冷設備はないものの、そもそも冷凍品は速達性を必要とせず、通年で客室同様の室温が保たれているので、荷主も梱包時の保冷管理がしやすい。乗客の乗降が終わった後、荷物の“乗車”が行われた。

列車は博多を発ち、山陽新幹線区間へ。順調に新大阪を目指していたが、この日は大寒波が日本中を包み込んでおり、山口県内の車窓は雪景色に。この寒波の影響で伯備線が終日運転見合わせとなり、米子駅から伯備線を経由する特急「やくも」と山陽新幹線を乗り継いでくる予定だった活け松葉ガニの即日輸送が無念の中止になった。実はカツオについても「時化により水揚げなし」と予告されていた。こうした展開も即日輸送ならではの臨場感であり、消費者へ生産地のリアルを伝えられる重要な要素だろう。
航空貨物にはできない「小ロット個別配送」
途中、大雪により「さくら546号」は30分ほどの遅れをもって新大阪駅に到着。荷物運搬のプロであるジェイアール西日本マルニックスが荷卸しを担当し、KITTE大阪まではトラックがアンカーを務めた。
14時18分、鹿児島の市場を今朝出発した、カツオたちが売り場に到着。水揚げから約10時間、タタキに加工済みと考えるとかなりのスピードだと感じる。速達性を考えるなら航空機の利用も選択肢の1つではあるが、運航頻度や生産地消費現場間をつなぐ小ロット個別配送対応などを考慮すると、新幹線輸送のほうが応用性は高く、ここにも新幹線荷物輸送の可能性が光る。カツオのタタキが店頭に並べられると周辺にいた客が集まり、商品を手にする客の中から「今朝鹿児島で獲れたんですか」と驚く声が聞こえた。
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