幸せの秘訣は「退職前」の断捨離にあり! 米国人はどうやって老後に備えるのか
専門家によると、ダウンサイジングで最初に考えるべきことは、人生の次のステージをどのように生きたいか、ということだ。それは、これまで何をしてきて、この先何を目指すのかを熟考する機会となる。
ダウンサイジングは、単なる引っ越し以上のものだ。新しい場所で、新しい人生を創造するチャンスだと考える人もいる。「物を処分すると、本当に解放された感じがした」と、ウェルシュは言う。
家を売る前に持ち物の棚卸しを
実際のプロセスは、予想よりも長くかかることが多い。物を捨てたり寄付したり売却したりするのは、難しい場合があるからだ。前々から計画して行うことが最善の方法だ。家を売りに出す前であっても、「いま持っている家具や美術品、アクセサリーなどを棚卸しし、次の場所で使えるかを判断していくとよい」と言うのは、メリーランド州のインテリアデザイン会社、タイディングス・デザインのオーナー、ダナ・タイディングスだ。
持っている物の価値を鑑定してもらうことも検討しよう。その際には、期待よりも評価がずっと低くなる可能性があることを覚悟しておくことだ。特に、アンティークの家具や銀器、アクセサリーなどはその可能性がある。昔は評価が高くても、今ではほとんど価値のない物がたくさんある。
なかには、物を比較的簡単に処分できる人たちもいる。タイディングスは言う。「いま持っている物はこれまでの人生の思い出だ。私はダウンサイジングしようとする人たちに、『あなたは新しい場所で、すばらしい思い出をこれから作るのです』と言う。すると、彼らは気分がよくなるようだ」。
遠くに行く人、近所の集合住宅に移る人
ケイ・アップルマンとエドワード・モプシックは、33年近く暮らしたメリーランド州ベセスダの家から、3キロメートルほど離れた場所にある寝室2部屋のコンドミニアムに引っ越そうとしている。庭付きの家を出て、階段や芝刈りの心配がなく、屋内と屋外のプールなど多くの設備を備えた「集合住宅」に住み替えるのだ。
友人の多くが、ゴルフ天国と言われるノースカロライナ州のパインハーストに引っ越したが、2人は自分たちの根っこを失いたくなかったという。「この場所に慣れ親しんでいるから、新しい土地には移りたくなかった」とアップルマンは言う。
2人はどうやって持ち物を減らしたのだろうか。
「少しずつ進めていくことだ」と、10年前に引退したアップルマンは言う。口腔外科医の仕事を8月に引退した72歳の夫は、医学書を処分するのは現実的なことだったと話す。なぜなら、必要な物はたいていオンラインで読めるからだ。
屋根裏にあったたくさんの物、たとえば高校の卒業アルバムなども処分した。「そんな物があったことも忘れていたし、この先も持っていたくなかった」とモプシックは言う。「30年近くも、私たちの人生に存在していなかったのだから」。
しかし、彼らはアップルマンの母から受け継いだアンティークについては、一部を取っておくことにした。また、新しい家で使うために、時計もいくつか残した。