企業や起業家と連携、興味を探究してキャリアにつなげる「通信制サポート校」ができた訳 HR高等学院「社会との接続」で課題解決力を育成
とくに社会との接続を意識したプログラムに力を入れている。「企業連携PBL」は、例えば企業のヒット商品を誕生させるために生徒たちが企業と共同で商品開発を行い、協働や課題解決の力、実践的なスキルを身に付けていく。すでにMIXI、ロッテ、docomoなど5社以上の企業の参加が決まっていて、今後も生徒たちのやりたいことに合わせてジャンルを増やしていく予定だという。
また、「トップランナーとの対話型学習」では、起業家、市長、クリエイターなどさまざまなジャンルのトップランナーを招き、毎週2時間ほどの特別講義を開催。第一線で活躍する人たちと対話することで、キャリアイメージの具体化などを行う。ほかにも幅広い企業で働く社会人と講師が講義を行う「キャリアセッション」なども開催される。
「基礎教科に関しても、単位取得にはつながらない時間にはなりますが、『恋愛を数学で解く』といった、興味を持つきっかけになるようなオリジナルの授業もたくさん用意しています」(山本氏)
「人選にこだわった」、生徒に伴走する3人のコーチ
ただ、いくら充実したプログラムがあっても、生徒たちがうまく利用できなければ意味がない。そのため、サポート体制にも力を入れる。
クラス制を採用して仲間と共に活動できる環境をつくりつつ、生徒は「キャリア探究コーチ」と呼ばれるクラス担任と月2回ほど“1on1”で面談を行い、単位取得など学習面だけでなく学びたいことや今後の進路まで相談できる。
「生徒の個性をきちんと発揮させるのに重要なポジションであり、ファシリテーションやコーチングの能力がないと務まらないので人選にこだわりました。2025年度は3人のキャリア探究コーチがおり、主任ははたらく部でもコーチをしていた実績のある人物。ほかに東大卒の人材系ベンチャー企業経験者、渋谷教育学園渋谷中学高等学校の元教諭が、生徒たちに伴走します」(山本氏)
金子氏も「子どもの興味や進度は本当に人それぞれ。フレキシブルに個別最適な学びをつくっていくので、コーチはキーになると考えています」と話す。
来年度以降のコーチの増員に向け、HR高等学院と金子氏は共同で研修プログラムも準備中。座学だけでなく実習を含めたプログラムで、人材育成をしていく予定だ。
そのほか、スクールソーシャルワーカーと社会福祉士の資格を持ったスタッフも在籍しており、今後はスクールカウンセラーも配置する予定だ。
「不登校を否定的に捉えなかった」「楽しさを爆発させられそう」
一期生となる2025年度の入学者は、71人(高校1年生が46人、転入生となる高校2・3年生が25人)。「何か趣味や特技を持っている子など、面白い子が集まっていると感じます」と、山本氏。生徒たちの入学の決め手はなんだったのか。

中学校の途中で不登校になったため、高校は通信制を考えていた周東凛帆さんは、ほかのサポート校の説明会にも参加したが、HR高等学院は不登校を否定的に捉えることなく、前向きな言葉をかけてくれたのが印象的だったと話す。
「授業もトップランナーの講義などがあり、ビジネスやデザインに興味がある自分にぴったり。やりたいことを見つけられる可能性を感じられました」(周東さん)