認知度も低下、教員の処遇改善…教育の重要局面で何ができるか?「日教組」の現在地 過去最低の組織率18.8%でも発信強化の真意

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日教組が2024年に実施した「学校現場の働き方改革に関する意識調査」で、教員に授業準備にかけたいと考えている時間を聞いたところ、平均で週に6時間32分でした。

これだけの時間を勤務時間内に確保するのは、現状では無理です。小学校だと朝、子どもたちを迎えてから朝の会があって授業をしていると、6時間半とか7時間くらいかかってしまいます。子どもたちや授業にかかわる業務でパンパンの状況で、勤務時間の残りはわずかでしかありません。

授業準備をするには、結局は時間外勤務(残業)をしたり自宅に持ち帰ったりするしかありません。教員が必要としている授業準備時間を、それも勤務時間内で確保することが、授業の質を上げるためにも働き方改革を進めるためにも、絶対に必要です。

——働き方改革のためにも給特法の見直しが必要です。日教組は給特法の廃止を掲げていますが、廃止によってどうなるのでしょうか。

給特法は、もともと時間外勤務をさせない法の立て付けになっています。ところが実際には、時間外勤務を「教員の自主的・自発的勤務」として、いわゆる残業代を支払う必要のある勤務とみなさない解釈がされてきています。

給特法が残れば、この解釈も残ることになります。残業代を支払わずにどんどん仕事をさせることができるので、学習指導要領の内容や教科書の量を減らそうということにもなりません。

例えば、午後3時半からテストの丸付けを始めて、所定勤務時間の5時までは正式な勤務だけど、5時を過ぎれば正式な勤務とは認められずに自主的・自発的勤務とされてしまっています。子どもたちの評価にかかわる大事な丸付けという同じ仕事をしているにもかかわらず、いつやるかによって「勤務」と「自主的・自発的勤務」に区別されてしまいます。かなり無理がありますよね。

給特法を廃止すれば、このような無理な解釈はできなくなるはずです。だから、給特法は廃止しなければいけません。私たちは、ごく真っ当な主張をしていると思っています。

そして、一般の企業と同じ労働基準法(労基法)の適用を求めています。労基法第37条では、法定労働時間を超えて働いた場合や休日労働、深夜労働には割増賃金を支払うことを義務づけています。教員の時間外労働にも、割増賃金(地方公務員の場合は時間外勤務手当)が支払われることは当然のことです。

——かつて、教員の時間外勤務に割増賃金を支払えば9000億円かかるという文科省の試算もありました。

それだけの割増賃金を支払って働かせるのは、「お金がもたないよね」となります。それだけの支出を財務省も許すわけがないので、時間外勤務の削減に文科省も取り組まないわけにはいかなくなります。長時間労働是正に本気で向き合うしかなくなるわけです。

地方公務員法を改正して労基法の適用を

——給特法廃止のほかに求めることはありますか。

地方公務員法(地公法)第58条を改正して、教職員にも労基法第102条を適用させるとともに、労働基準監督機関を人事委員会(人事委員会がない場合は市区町村長)ではなく労基署にすることを求めたいと思います。今は地公法第46条等で、違法な時間外労働「ただ働き」について措置要求すれば、人事委員会が是正勧告を行うことになっていますが、あまり実効性がないのが実情です。

地公法第58条の改正をすれば、労働基準監督官が労働基準法違反について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行うことが認められます。労基法に基づいて労基署が動けば、使用者側、つまり校長が逮捕される事態もありえます。

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