豪州やNZで「日本人の鉄道旅」が激減した原因 ワーホリで渡航したのに「仕事がない」悲哀

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当時は円高だったので、航空各社にしてみれば「強い円で売れ、しかも機内で多くのお土産などを購入してくれるなら」と、航空券を安く売っても採算が合う時代だった。

日本からのリゾート地需要は拡大し、日本からバリ、セブ、プーケット、ペナン、コタキナバル、クチン、ランカウイ、タヒチなどへも直行便が飛び、さらにモルディブ、セイシェル、モンテゴベイ(ジャマイカ)などへのツアーが組まれた。メキシコ観光局はカリブ海側のカンクンに加えて、太平洋側のリゾート地アカプルコまで日本での販売プロモーションを行うほどであった。

薄れてしまった日本の存在感

当時のオセアニア地域などへアジア地域からの観光客で最も多かったのが日本人である。アジアからオセアニアへの直行便では日本からの便は存在感が強かった。シンガポール航空をはじめ、東南アジア地域からのほうが便数は多かったが、それはヨーロッパ―シンガポール―オーストラリアなどといった需要に支えられていた。

しかし、その後は、韓国、台湾、中国、ベトナムなどからの需要が増えていく。現在は日本からオセアニア地域への便に日系LCCは飛んでいないが、韓国、フィリピン、ベトナム、マレーシアからは大手航空会社のほかにLCCも飛ぶようになった。いっぽうの日本路線はというと、2023年にオーストラリアのヴァージン・オーストラリアが羽田就航を果たすものの、利用低迷から2年にも満たず2025年2月に撤退となった。

日本人がワーホリで渡航しても仕事にありつけないことは前述したが、現在はアジア各国からの渡航者が多く、日本人はアジアのなかでも英語がもっとも不得意とされている。農業の仕事だって、雇う側としてみれば意思疎通のできる人種を雇うことになるので、日本人が職に就ける機会は激減している。オセアニア地域は治安がよく、かつては語学留学先としても人気であったが、現在は経済的に余裕がないと難しく、そういった需要もかなり減っている。日本の賃金の適正化、円安の是正などで、日本を強くすることが望まれるところである。

英語力でもアジア各国に抜かれ、日本の賃金は安く、さらにその安い賃金の価値も、円安で海外の通貨と比較すると目減りしているので、日本は「にっちもさっちも行かない」状況に陥っているといっても過言ではない。かつてのような「どこへ行っても日本人がいる」という時代はもうやってこないのではないかと危惧されるのが寂しい限りである。

谷川 一巳 交通ライター

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たにがわ ひとみ / Hitomi Tanigawa

1958年横浜市生まれ。日本大学卒業。旅行会社勤務を経てフリーライターに。雑誌、書籍で世界の公共交通機関や旅行に関して執筆する。国鉄時代に日本の私鉄を含む鉄道すべてに乗車。また、利用した海外の鉄道は40カ国以上の路線に及ぶ。おもな著書に『割引切符でめぐるローカル線の旅』『鉄道で楽しむアジアの旅』『ニッポン 鉄道の旅68選』(以上、平凡社新書)などがある。

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