アップルの提携先選びは一筋縄ではいかなかった。例えば、テンセントはスーパーアプリ「微信(ウィーチャット)」、バイトダンスはショート動画アプリ「抖音(ドウイン)」(訳注:TikTok[ティックトック]の中国国内版)を傘下に擁し、それぞれ巨大なユーザーベースと独自の決済システムを持つ。両社はアプリストアの手数料負担をめぐってアップルと対立している。
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中国のAIスタートアップは企業規模が小さく、iPhoneユーザーの膨大なアクセスに対応する能力と経験が足りない。前出のジープAIは規模が相対的に大きいが、2024年10月にサムスン電子と提携契約を結んでおり、アップルとの協業は利益相反になりかねない。
バイドゥに関しては、同社の組織体制が問題になったもようだ。「バイドゥの生成AI開発チームは、社外とのパートナーシップの担当チームと連携していない。これではアップルとの提携交渉で不利になる」。内情に詳しい関係者は、財新記者の取材に対してそうコメントした。
DeepSeekに匹敵するAI技術
結果として、提携候補に最後まで残ったのがアリババだった。同社は中国のクラウド大手であり、強力な計算能力を持つ。また、祖業のEC(電子商取引)事業で培ったユーザーサポート能力にも定評がある。
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さらに、アリババは肝心のAI技術でも侮れない実力を誇る。同社が1月下旬に発表した汎用型AIモデルの最新版「Qwen 2.5 Max」は、アメリカの評価機関によるベンチマークテストで、中国のAIスタートアップDeepSeek(ディープシーク)の「V3」を上回るパフォーマンスを示した。
アリババの関係者によれば、推論に特化したDeepSeekの「R1」に対抗するAIモデルも、近くリリースするという。アップルはこうした総合力の高さを評価し、アリババをパートナーに選択したとみられる。
(財新記者:劉沛林)
※原文の配信は2月12日
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