教員の「教育力」評価、ファカルティ・ディベロップメント進まない大学の行く末 「学生がどのくらい成長できるか」がポイントに

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「私がやっているこの仕事は、教員からはあまり感謝されない仕事です。若いFD担当教員がベテラン教員から批判を受けることもよくあります。しかし、1人の教員を変えることができれば、多くの学生たちを救うことにもつながります。より多くの学生の学びを促進し成長させることができるかもしれないのです。学生の成長を遅らせてはいけないし、止めてもいけない。FD担当教員は教員を変えることで、学生も変えて、大学も変える仕事でもあるのです」

今後、日本の大学が形式的なFDから脱するためにはどうすればいいのだろうか。佐藤氏は、このままボトムアップ型を続けても定着は困難だと指摘する。

「実は、フランスも日本と同様、FDが停滞している状況に長らくありました。そのフランスが数年前に新任教員に対するFDを法令上、義務化しました。スウェーデンでは、FDを法制化したものの、大学学長らの反対によって廃案となりましたが、学長らの合意によって、FD研修を強化してきました。

このように、法令による義務化ではなく、大学関係の連合組織、例えば国立大学協会や日本私立大学連盟・日本私立大学協会などが自主的に取り組みを進めるのが望ましいと思っています。今、大学教育の質に対して国民の目は厳しいものがあります。大学教員の質を高める取り組みを大学関係者自らが構築できなければ、一時的にでも法令上でさらに一歩踏み込んだ義務化が必要な時期かもしれません」

日本の大学教育は、かなり以前からマスプロ化が指摘されてきた。最近でも、欧米の大学との比較で大学教育の強化が政府や企業からも叫ばれるようになっている。

少子化が進む中、日本の大学が生き残っていくには、教員の教育能力を強化することは欠かせない。魅力的な大学であり続けるためには、魅力的な教育を提供する大学であり続けなければならない。そのために、やはりFDには力を入れるべきだろう。佐藤氏もこう言う。

「少子化に伴って、大学は選ぶ時代から選ばれる時代に生きています。日本の大学ではなく、海外の大学を選ぶ学生も増えています。これから日本の大学が、留学生も含めた多くの学生に選ばれ、生き残っていくためには、キャンパスや偏差値といった要素以上に、学生がどれくらい成長できるのかが重要です。それは何より大学教員の教育力にかかっています。今まで以上に、受験生や保護者は授業やカリキュラムに注目するようになっています。よい学びと成長を提供することこそが大学の差別化につながるのです。それができない大学は早晩、撤退することになるでしょう」

(文:國貞文隆、編集部 細川めぐみ、注記のない写真:takeuchi masato / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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