7割は課長にさえなれません 城 繁幸著
城氏は『若者はなぜ3年で辞めるのか?』『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか』の著者。まえがきによれば、本書は若者をテーマとする三部作の最終作という位置づけ。日本を象徴する平均的地方都市「日本町」にある日本町随一の大企業「大日本商事」を舞台に多数の登場人物のストーリーが語られる。
正社員に登用されない30歳派遣社員、就職が決まった22歳学生、一児を持つ37歳一般職女性、その夫である41歳主任男性、54歳窓際部長、就職できない30歳博士、派遣社員と学生の父である57歳下請け会社係長。
いずれもありそうな話ばかりだ。架空の作り話ではなく、この数年の雇用問題の縮図である。派遣切り、下請けいじめ、結婚していても子どもをつくれない夫婦、昇進と昇給が停滞した中堅社員、窓際に追い落とされる中高年幹部社員。
たしかにその通りだ。これらの人物が物語の中に登場した後に、その背景を説明しているので、とてもわかりやすい本になっている。
著者によれば、大企業が優秀な派遣社員や博士を正社員として採用しない理由は年功序列制のため。大日本商事では「年齢で給料も地位も決まる」。正社員職歴のない「歳を食った」派遣社員、博士、フリーターは「割高」の存在であり、敬遠される。この傾向は大手ほど根強い。
非婚化が進む日本だが、結婚した夫婦一組が生涯につくる子どもの数(完結出生児数)も減っている。過去30年間は2.2前後をキープしていたが、2005年に2.09に急減した。原因は家計が逼迫するからだ。夫の収入だけで2人以上の子どもを育てるのは難しいが、幼児を抱えた女性が働く環境は整備されていない。