セブン苦戦でも大ヒット「さばの塩焼」がすごい 総菜売り場を支える中堅メーカーの秘密とは?
STIのユニークな点はほかにもある。ポイントは規模と技術だ。全国のセブンには1日約2000万人の客が来店する。メーカーには巨大な需要に応える生産体制が求められ、中小零細企業では難しい。まして単独での供給となれば、なおさら規模が必要になる。
では大手水産企業やメーカーに委託すればよいかというと、そう簡単ではない。魚は大きさや脂のりなど個体差が大きく、焼き魚や煮魚のように形や見た目も重要な商品の場合、目視による確認や手作業での微調整が不可欠だ。完全な機械化が難しく、効率が要求される大手では扱いづらい。
焼き魚の場合、皮目の焼き具合にもムラが出る。そこで、STIではラインの端で作業員が目視で確認し、ガスバーナーで焼き目をつけ直している。
加工前の魚を規定の重さにカットするのも作業員の感覚が不可欠だが、工場の責任者は「完璧にできるようになるまで2~3年はかかる」と語る。STIの幹部は「うちは大手競合がやりたがらない部分にあえて力を入れている。それなりの設備を持ちながら、これだけ人手をかけられるメーカーはそう多くない」と話す。
他社が避ける面倒な作業を徹底することで商品を差別化し、独自の地位を築いたニッチプレイヤーといえるだろう。
魚総菜に特化するSTIは、関連する特許も多く持つ。同社によれば、魚総菜調理に関する特許の数はマルハニチロ(2024年3月期の売上高は1兆0306億円)、ニッスイ(同8313億円)に次ぐ3位。「さばの塩焼についても皮をパリっと焼き上げる独自技術の特許を出願中」(広報)という。
関西新工場開業で2025年も拡大基調か
食品スーパーなどで魚離れが叫ばれて久しい中、圧倒的な品質を武器にSTIの業績は急成長が続く。この5年で売上高は1.7倍、営業利益は3.4倍に拡大した。
2024年11月には手薄だった関西で新工場(大阪府泉佐野市)が稼働した。生産能力の拡大はもちろん、関西エリアでの販売日数の延長にも寄与する見通しだ。
創業者で社長の十見裕氏は決算説明会で「国内の売れ筋商品をベースに、2025年度にも(海外で)テスト販売を実施したい。海外での工場取得も検討している」とさらなる成長、海外進出への意欲も語っている。
厳しい業績が続くセブンにとって、パック魚は今後も成長が見込める期待のカテゴリーの1つ。製造パートナーであるSTIの存在感も、売り場とともに一段と高まりそうだ。
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