東海道新幹線「60周年CM」はどうやって作られたか JR東海が明かした企画から完成までの一部始終

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――JR東海音楽クラブのCM参加理由は?

「JR東海音楽クラブは、JR東海のさまざまな職に就くメンバーで構成されており、これまでの60年間の感謝の気持ちを込めて演奏する奏者として、最も適していると考えたため、今回のCMに起用しました」

――メンバーの感想・反響などは?

「クラブのメンバーからは、『普段はリニア・鉄道館や野球応援などの会社行事で演奏しているが、今回は全国的に放映されるCMの録音という、とても貴重な経験をさせていただき、クラブ員一同感謝している。CM放映、メイキング動画公開後は、社内外の多くの方々からお声掛けいただくなど、反響の大きさに驚いている。今後とも、皆様に喜んでいただける演奏を心がけて精進していく』との感想がありました」

JR東海音楽クラブ(写真:JR東海)

世界中から募集してはどうか

JR東海の過去のCM代表格として思い浮かぶのは、1987年と1992年に放送された「シンデレラ・エクスプレス」だろう。遠距離恋愛中の恋人たちが週末を一緒に過ごし、日曜の最終新幹線で再び離れ離れになる。その発車間際に、新幹線ホームで2人の時間を惜しむシーンが、ドラマチックに演出されていた。このCMは、たちまち当時の若者の心を掴み、社会現象にまで発展したと言われている。

1987年当時、最終列車(ひかり289号)は0系車両が使用されていたが、CMの反響が非常に大きかったためか、8月16日から日曜日に限って映像と同じ最新鋭の100系車両に運用が変更され、のちに毎日100系で運行するなど、CMを発信したJR東海自体にも、大きな影響が出るほどだった。

その後継CMといえる、恋人たちの遠距離恋愛を映す「クリスマス・エクスプレス」は、さらに人気を博した。毎年変わる魅力的な映像に、冬が待ち遠しい人も多かったはずだ。今もなお、CM界のクリスマスの神話として語り継がれている。

打って変わって、家族愛を描写している映像で、夏休みシーズンを意識した「ハックルべリー・エクスプレス」をご存じの方もいるであろう。2人の少年が、田舎のお爺ちゃん、お婆ちゃんに会いにいく。という内容で、「また来たよ〜!」という少年の声とともに、日本の夏の風景が映し出される。美しく演出された映像は、本当に心奪われるものだ。

また300系「のぞみ」登場時のCMも、子供たちのワクワクドキドキ感、東海道新幹線が大好き!という想いがあふれていて、人気があった。

長い年月にわたり、時代とともにさまざまな人々が出会いと別れを繰り返し、経験と思い出を乗せてひた走る東海道新幹線。多くの日本人にとって、日本の誇りと言えよう。そしてその思いは、日本人から世界の人々にも伝わるようになった。

今後、こういった募集型コマーシャルを製作するときは、国内のみならず、世界中を巻き込んでほしい。なぜなら東海道新幹線は、多くの訪日客が利用しており、今や日本国内を走行する“国際列車”だといえるからだ。

渡部 史絵 鉄道ジャーナリスト

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わたなべ・しえ / Shie Watanabe

2006年から活動。月刊誌「鉄道ファン」や「東洋経済オンライン」の連載をはじめ、書籍や新聞・テレビやラジオ等で鉄道の有用性や魅力を発信中。著書は多数あり『鉄道写真 ここで撮ってもいいですか』(オーム社)『鉄道なんでも日本初!』(天夢人)『超! 探求読本 誰も書かなかった東武鉄道』(河出書房新社)『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社)『電車の進歩細見』(交通新聞社)『譲渡された鉄道車両』(東京堂出版)ほか。国土交通省・行政や大学、鉄道事業者にて講演活動等も多く行う。

 

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