ただし、もっとも長い目でみれば、上記のような首尾一貫性のなさが基軸通貨としてのドルの地位を自ら毀損させることにつながりかねない。
上記のようにインフレ圧力を高める政策の一方で、FRBに低金利を求める口先介入はFRBに難しい判断を強いる。また、銀行規制の緩和を実現するためにFRBの銀行監督権限を問題視する声も聞こえてくるが、これもFRBを力づくでも抑え込む政治的欲求に根差している。基軸通貨としてのドルを守るうえではマイナスである。
世界の覇権を争う中国に対する懲罰的な高関税のみならず、カナダやメキシコの近隣国、日本を含む同盟国、世界の成長エンジンである新興国に対しても関税の脅しを武器に、アメリカへの工場移転、AI(人工知能)や半導体など戦略産業の保護を図れば、アメリカの競争力が高まるという楽観シナリオもあるが、むしろアメリカを巻き込まないサプライチェーンの構築が進む可能性もある。
こうした首尾一貫性のなさは、どこかで市場も織り込み始める。たとえ就任後しばらくはポジティブな要因に着目した「トランプラリー」が続いても、どこかで熱狂は醒める。
リスクプレミアム調整で株価下落もありうる
筆者は、特に「トランプ2.0」の不確実性の割にむしろ当選後に縮小が続くリスクプレミアムに注目している。長期金利が上昇しても株価のバリュエーション(PER:株価収益率)が上がっているということは、それだけリスクプレミアムが圧縮されていることを意味する。この不可解な動きはいずれリスクプレミアムの急拡大によって修正されるとみるのが妥当であろう。
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