宇都宮LRT、「キーパーソン」が明かした成功の鍵 インパクトある外観、マイカーに負けない内装

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「雷都」は「ライト」と読める。住民アンケートの結果、車両の愛称が「ライトライン」に決定し、デザインも雷を示す黄色に流れるような流線型の形が決まった。車両は街のシンボルとして、強いメッセージ性を持つようにデザインされたという。確かに黄色と黒の組み合わせは一般的な鉄道よりも強い印象を受ける。

車両の先頭部分を伸ばしてほしいという要望もあったが、要求どおり先頭を伸ばすと運転士の視覚を妨げてしまう。そこで、先頭は伸ばすと同時に細くして、なるべく運転士の視界を確保できるようにした。

座席などの車内デザインについては、自動車ユーザーを意識し、「マイカーに負けない内装を目指した」。確かに座席の形状は一般的な通勤電車というよりも乗用車の雰囲気に近い。ライトラインの役割が自動車からLRTへのシフトだとすれば、乗用車の内装に負けるわけにはいかない。

HU300 先頭部
車両の先頭部は運転士の視界確保を考慮して細くなっている(編集部撮影)
宇都宮LRT 内装
マイカーに負けないデザインを目指したという内装(撮影:梅谷秀司)

地域でデザインワークショップを開催し、各停留場の壁面に表現するデザインも決めた。内装の一部にも宇都宮の伝統工芸である宮染めのイメージを表現するなど地域性を反映させた。デザイナーの仕事とは格好いい絵を描くことではない。運転士、乗客、沿線市民などそれぞれが持つ異なるニーズを十分にくみ取り、そこから最適解を生み出すのが真の役割なのである。

「LRTを活用したまちづくり」は広がるか

ライトラインのキーパーソン3人による講演の後はRDE実行委員も加わってのパネルディスカションが行われた。ここでもキーパーソンたちがとっておきの話を披露した。

たとえば中尾氏。「路面電車の最高速度は時速40km、編成長は30m以内と定められているが、阪堺電車は一部区間で時速50km走行しており、広電のグリーンムーバーの編成長は30.5m。どちらも特別認可を得た。最近の国土交通省は柔軟ですよ」。全国でLRTの導入を検討している自治体や事業者へのメッセージである。規定だからとあきらめるのではなく、「どんどん国に相談すべきだ」とアドバイスした。

宇都宮駅東口 ライトライン
宇都宮駅東口を出発するライトライン=2023年8月(編集部撮影)
【写真の続き】車内をさまざまな角度から。運転台の視界はどのくらい広い?

講演会が終わりホールを出ると、宇都宮駅からライトラインの車両が大勢の客を乗せて走り出すのが見えた。ライトラインは宇都宮駅の西側に延伸し、栃木県庁、東武宇都宮駅などを経て大谷観光地付近まで延伸する計画がある。わずか3kmの区間だが、実現すれば市民にとっての利便性は大きく拡大する。2030年開業を目指し検討が進められている。

11月17日に行われた栃木県知事選では現職の福田富一知事がライトラインの宇都宮駅西側延伸と東武宇都宮線への乗り入れを公約に掲げ6選を果たしたこともはずみとなる。ライトラインの事例を参考に、LRTを活用したまちづくりが全国に広がることを期待したい。

この記事の画像を見る(25枚)
鉄道最前線の最新記事はX(旧ツイッター)でも配信中!フォローはこちらから
大坂 直樹 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事