宇都宮LRT、「キーパーソン」が明かした成功の鍵 インパクトある外観、マイカーに負けない内装
「雷都」は「ライト」と読める。住民アンケートの結果、車両の愛称が「ライトライン」に決定し、デザインも雷を示す黄色に流れるような流線型の形が決まった。車両は街のシンボルとして、強いメッセージ性を持つようにデザインされたという。確かに黄色と黒の組み合わせは一般的な鉄道よりも強い印象を受ける。
車両の先頭部分を伸ばしてほしいという要望もあったが、要求どおり先頭を伸ばすと運転士の視覚を妨げてしまう。そこで、先頭は伸ばすと同時に細くして、なるべく運転士の視界を確保できるようにした。
座席などの車内デザインについては、自動車ユーザーを意識し、「マイカーに負けない内装を目指した」。確かに座席の形状は一般的な通勤電車というよりも乗用車の雰囲気に近い。ライトラインの役割が自動車からLRTへのシフトだとすれば、乗用車の内装に負けるわけにはいかない。


地域でデザインワークショップを開催し、各停留場の壁面に表現するデザインも決めた。内装の一部にも宇都宮の伝統工芸である宮染めのイメージを表現するなど地域性を反映させた。デザイナーの仕事とは格好いい絵を描くことではない。運転士、乗客、沿線市民などそれぞれが持つ異なるニーズを十分にくみ取り、そこから最適解を生み出すのが真の役割なのである。
「LRTを活用したまちづくり」は広がるか
ライトラインのキーパーソン3人による講演の後はRDE実行委員も加わってのパネルディスカションが行われた。ここでもキーパーソンたちがとっておきの話を披露した。
たとえば中尾氏。「路面電車の最高速度は時速40km、編成長は30m以内と定められているが、阪堺電車は一部区間で時速50km走行しており、広電のグリーンムーバーの編成長は30.5m。どちらも特別認可を得た。最近の国土交通省は柔軟ですよ」。全国でLRTの導入を検討している自治体や事業者へのメッセージである。規定だからとあきらめるのではなく、「どんどん国に相談すべきだ」とアドバイスした。

講演会が終わりホールを出ると、宇都宮駅からライトラインの車両が大勢の客を乗せて走り出すのが見えた。ライトラインは宇都宮駅の西側に延伸し、栃木県庁、東武宇都宮駅などを経て大谷観光地付近まで延伸する計画がある。わずか3kmの区間だが、実現すれば市民にとっての利便性は大きく拡大する。2030年開業を目指し検討が進められている。
11月17日に行われた栃木県知事選では現職の福田富一知事がライトラインの宇都宮駅西側延伸と東武宇都宮線への乗り入れを公約に掲げ6選を果たしたこともはずみとなる。ライトラインの事例を参考に、LRTを活用したまちづくりが全国に広がることを期待したい。

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