宇都宮LRT、「キーパーソン」が明かした成功の鍵 インパクトある外観、マイカーに負けない内装

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

工事現場で見学会を開催した際、応募者は790人にすぎなかったが、ライトラインの車両納入後に実施した見学会では応募者が2万5400人に達したという。開業前には脱線事故などのトラブルもあったが、批判の声は影を潜め、「早く開業してほしい」という声が圧倒的に大きかったという。「車両が格好いいと、乗客もおしゃれをして乗るようになる。街が華やぐのです」と、矢野部長が述べた。

HU300
車両基地に搬入されたLRT車両「HU300形」=2021年5月(編集部撮影)

続いて壇上に立ったのは宇都宮ライトレールの中尾正俊常務取締役である。中尾常務は広島電鉄出身。長年にわたり路面軌道事業にかかわった経験を買われ招聘された。まず行ったのは運転士、技術者、労務・管理・人事などの事務職員など合わせて約100人の人材確保。とりわけ苦労したのが運転士である。

鉄道の運転免許証を持っている人は20人ほどいたが、路面電車の運転免許証を持っている人が少ないのである。そこで、中尾氏の人脈を駆使して、全国の路面電車を運営する鉄道会社8社に社員を派遣して6カ月の座学と運転訓練を受けてもらった。

また、運転部と技術部の両部長職は未経験者には務まらないため、運転部長は函館市企業局交通部から、技術部長は長崎電気軌道からスカウトしてきてもらったという。「将棋の飛車と角がそろったようなもので、これで運行や保安についてはやっていけると確信した」と中尾常務が振り返る。

デザインはマイカー利用者を意識

最後に壇上に立ったのは、実際にデザインを手がけたGK設計の入江寿彦取締役である。GKグループはこれまでに大阪万博のモノレール、横浜市高速鉄道、広島アストラムライン、多摩都市モノレール、富山ライトレールなど数々の公共交通デザインの実績を持つ。

入江氏からはライトラインのトータルデザインコンセプトが詳細に説明された。デザインコンセプトは「雷都を未来へ」。古来、宇都宮は雷が多く、「雷都」と呼ばれてきた。一般的に雷は危険なイメージがつきまとうが、宇都宮では雷が落ちた田は豊作になるといわれており、雷は稲の実りをもたらす恵みの象徴だったという。「雷の放電により空気中の窒素が酸素と結びつき、窒素化合物となり、これが雨に溶けて降り注ぐと、稲の肥料となり成長を促進させる。科学的にも証明されているのです」。

宇都宮LRT トータルデザイン ディスプレイ
LRTのトータルデザインなどを説明する市役所内のディスプレイ=2017年10月(編集部撮影)
ライトライン ロゴ LIGHTLINE
車両側面に描かれた「ライトライン」のロゴ(撮影:梅谷秀司)
次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事