自衛隊のコスト、航空機や戦車、艦艇などを開発・製造する防衛産業の実態とは
自衛隊に納入する装備を製造する主な企業には、日本を代表する企業が勢ぞろいしている。三菱重工業や川崎重工業のように、航空機や艦艇など多くの装備品を1社で製造している企業もあるものの、ほかはある程度の「すみ分け」が存在する。
また、一つの装備品の製造には、多数の下請け企業がかかわっているのも、民生品と同じ。たとえば航空機の生産では、大企業が「主契約社」(プライムコントラクター)として防衛省と契約するものの、実際の製造にはベンダーと呼ばれる企業がかかわる。戦車で約1300社、護衛艦では約2500社ものベンダーがかかわり、その大部分が中小企業だ。中には、オンリーワンの技術を持ち、その技術がなければ生産が成り立たないという企業も少なくはない。
緊縮財政が続く中、防衛予算も右肩下がりが続く。それは直接、防衛産業に影響を与えている。
防衛産業への装備発注が確実に減っている中、各企業は自らの事業基盤の維持に四苦八苦している。防衛省からおカネが落ちなければ、売り上げも立たない。また、装備品の生産設備には、民生品の製造などに転用できない特殊な設備も多く、その維持もできなくなる。設備だけでない。職人技といった人材に頼る部分が多い装備品も少なくはない。今後も発注が減少すれば、そうした人・モノを手放さざるをえなくなる。
大企業さえも状況は同じだ。欧米をはじめとする外国の防衛産業は、「防衛専業」が多い。一方、日本では数ある事業の中の一部門であることが多く、一社全体の売上高に占める割合も数%程度。最大手・三菱重工業でも10%にも満たない。