ディズニー幹部が宣言「日本の独自作品を増やす」 競争激化の日本へ投資、長期でトップ級目指す

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――動画配信は競合も多い。日本の競争環境をどう見ていますか?

ルーク (結論を出すには)時期尚早だ。野球でいえば3回ぐらい。まだ急いでいない。いま大事なことは、慌ててシェアを獲得することではなく、最善のコンテンツを提供することだ。

動画配信は確かに競争が激しいが、勝者総取りの世界ではない。今後も多くのプレイヤーがエコシステムの一部となって存在するだろう。

ルーク・カン Luke Kang ウォルト・ディズニーのアジア太平洋地域プレジデント。2011年入社。2014年から上海で中国事業を統括。2017年から日本、韓国を含めた北アジアを管轄。日本での「ディズニープラス」立ち上げも経験(写真:ディズニー)

定額制動画配信サービスの世帯ごとの平均アカウント数は、日本で2以上になった。大きな市場なので、複数のプレイヤーが共存できる環境だ。アメリカの世帯平均は4.5程度で、日本はまだ拡大余地がある。

われわれは他社と同じ戦略を考えているわけではない。ディズニーにとって日本は、映画、商品、そしてテーマパークと、すべてのタッチポイントがある世界でも数少ない市場だ。動画配信を通じても、感情的なつながりを消費者に与えることを重視している。大事なことは、短期的ではなく長期的に戦略を組み立てることだ。

キャロル 3年前、地域の独自コンテンツを始めたときに、日本の世帯のアカウント数は2より低かった。今は2を超えたが、それでもほかのアジア地域の国と比べて低い。高齢化社会であることが影響しているかもしれないが、動画配信サービスが始まって、あまり時間が経ってないからともいえる。

日本においてディズニーブランドの認知はとても高い。一方で、現状では「ディズニープラス」で、スター・ウォーズも、マーベルも見ることができるということを知らない方も多い。今後はディズニーブランドを活用しながら、サービスとしての「ディズニープラス」の認知度をより高めていきたい。

リスクをとって「beyond Japan」

――今回、講談社や日本テレビとの連携をさらに強化しました。今後、日本企業との提携についての考え方は?

キャロル 日本では常にその機会をうかがっている。日本はとても奥行きのある市場。ディズニーが独りでできることには限りがある。

キャロル・チョイ Carol Choi ウォルト・ディズニー・ジャパン社長兼アジア太平洋地域エグゼクティブ・バイスプレジデント。2006年入社。中国でマーケティングを担当、韓国でのマネージング・ディレクターなどを経て2020年3月より日本法人社長。アジア太平洋地域の独自コンテンツ構築も統括する(写真:ディズニー)

動画配信の普及率が低い日本では、他社と競争しているというより、ともに動画配信を紹介している状況だと考えている。マーケティング面では、すでにフールーとのバンドル(組み合わせ)を始めているが、パートナーを広げる準備をしている。

制作面では、日本においては特にIPホルダーとの連携を重視している。出版社や制作スタジオ、作家などさまざまなIPホルダーともっと深く連携していきたい。

日本のIPホルダーと話していると、劇場公開を重視する姿勢が強いと感じることがある。だが、豊かなIPを2時間の劇場作品だけで語ることは難しい。動画配信でシリーズとして展開すれば、消費者と強いつながりを築くことができるかもしれない。今後日本では、確立されたIPをより生かすようなコンテンツを増やしていきたい。

――「エコシステム」という言葉が出てきましたが、ディズニーが日本のコンテンツ産業に与える影響とはどういうものですか。

ルーク まずローカルクリエーターと長期的で深い関係を構築していきたい。われわれが長期的に存在するプレイヤーであることを信用してもらい、それを証明していく必要がある。

日本は強固なエコシステムを持つ市場でもある。クリエーターの方とともに仕事をしてそれを引き出していきたい。日本のクリエーターにお伝えしたのは「think big」、より大きく考えていただきたいということ。そして、われわれもリスクをとり「beyond Japan」、ともに日本を超えていければと思っている。

並木 厚憲 東洋経済 記者

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なみき あつのり / Atsunori Namiki

これまでに小売り・サービス、自動車、銀行などの業界を担当。テーマとして地方問題やインフラ老朽化問題に関心がある。『週刊東洋経済』編集部を経て、2016年10月よりニュース編集部編集長。

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