今ほどではないが、女性が子どもの頃から実家はゴミ屋敷だった。しかし、「片付けたほうがいいんじゃない?」と親に言うことはできなかった。
「幼少期から何かを机の代わりにして、勉強をしたりご飯を食べたりしていました。キャンプじゃないですけど、それでちょっと楽しかったのはあるんですよ。大掃除のときに家族でちょっと過ごせるスペースを片付けて1畳分ぐらいだけきれいになって。でも、子どもながらに人に言ったらアカンなというのは思っていました」
中学校に上がると仲の良い男の子もでき始めたが、やっぱり家には呼べなかった。その頃から、「自分の家は普通じゃない、片付けないといけないのでは」と思うようになった。
「でも、ずっとそれで生活してきているし、なんか触れたらアカンことなんかなって。私にとって当たり前の状態なんですが、やっぱり安らげる場所ではないし、居心地は良くないんですよ。しだいに家に帰るより友達の家のほうがいいなとか、バイトしているほうがマシで、帰って寝るだけの生活になっていきました。18歳のときにキャリーバッグひとつで家出してしまって、もう実家には寄りませんでした。臭いものにフタをするじゃないですけど、見て見ぬふりをしていました」
女性が家を出て、弟と両親の3人暮らしになると、家族の関係も悪化していった。父親は家の中のゴミが増えるにつれて酒に逃げるようになり、アルコール依存症になって職を失った。女性と10歳以上年の離れた弟もなかば家出状態で、ついに母は精神を病んでしまった。
弟は家の状態を「別に普通やね」と語っていた
そんな状況を受け、「実家をなんとかしないといけない」と女性は決意する。しかし、母は「業者に頼むお金なんてうちにはない」の一点張りで、その話をするたびに喧嘩になった。20歳を過ぎ、働き始めた弟も精神的に不安定なままで、退職を繰り返していたという。
「このまま私が動かなかったら、もう一家全員おかしくなっちゃうと思って。お母さんに言ってもダメだから、弟に今の家どう思うって聞いてみたんです。でも、弟も赤ちゃんの頃からこの環境で育ってきたんで、“別に普通やね”って。私はその反応にすごい衝撃を受けて、まずは弟の話を聞くことにしたんです」
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