大手スーパーで減益、赤字が相次ぐ異常事態の深層 メーカーと消費者の「板挟み」で苦しい経営に
下の表を見てほしい。各社の主な業績指標をまとめた表だ。
まず注目すべきはベルク、ハローズの人件費率だ。両社は店舗のフォーマット化、画一的なオペレーションに定評のあるチェーンで、売上高に対する人件費率はそれぞれ11.2%、10.6%と競合に比べて抑制されている。
効率的な運営で価格を抑える原資を生み、相対的な低価格を実現しているのだ。節約志向を強める消費者の支持を集め、既存店売上高の伸び率でもこの2社は他社を圧倒している。
イオン系スーパーで数少ない増益決算となったマックスバリュ東海も、店舗運営においてグループの模範生とされている。同じイオン系であるUSMHと比べても人件費率の差は歴然だ。
別のイオン系スーパーの役員は「売り上げは毎日、粗利も週に数回見るが、人時生産性(従業員1人が1時間でどれだけ粗利益を生み出しているかを示す指標)は月末以降に振り返るのが一般的。マックスバリュ東海には日ごとでモニタリング、改善する仕組みができている。『東海から学べ』とホールディングス(イオン)から号令がかかっている」と明かす。
イオン社長「事業構造の抜本変革が急務」
当然、人件費の上昇は今年だけで終わる問題ではない。政府は賃上げに前のめりだ。石破茂首相は10月の就任から間もなく、岸田文雄前首相が掲げていた「2030年代半ばまでに最低賃金1500円達成」の目標を「2020年代に」前倒しする方針を示している。
今後も人件費の上昇が続く可能性は高く、スーパーの首脳陣には危機感が広がる。イオンの吉田社長は「事業構造を抜本的に変えなければならない」と語り、工場や物流といったインフラへの投資のほか、傘下の各社に一任していたプライベートブランドの集約にも意欲をにじませる。これらはイオンだけでなく、業界全体の課題といえそうだ。
コロナ特需、値上げラッシュと追い風が続いたスーパーマーケット業界だが、節約志向の逆風が吹き荒れる中、各社の真の実力が問われている。
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